第41話

文字数 395文字

 母が医師に性別を尋ねたのは、自分の母性で感じ取れている不確かな解答の答え合わせをしたかっただけなのだ。

 結果が延ばされようとそのこと自体に落胆する気持ちはない。

 母は僕が男の子であることを体の奥で気づいているからだ。

 また仮にその予想が外れて「女の子でした」と告げられても母はやっぱり落胆しないだろう。

 それよりも、

「この子元気なんですね? 先生そう仰いましたもの、元気に育ちますよね?」

 母はそれだけを念じ念押しした。

 こんな時の医師がどういった回答をするか僕にはわかっていることだが、

 初産(ういざん)の母には一言医師のお墨付きがもらえれば只それだけでよかった。

「ええ、そうですよ。赤ちゃんは元気です。お母さんが健康で元気に過ごしていれば、赤ちゃんも元気に育ちますから、心穏やかに、そして規則正しい生活を心がけてください」

 そう云うと医師は白い歯を見せた。

 母はやっとのことで余計な緊張を解いた。
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