第26話

文字数 305文字

 こうして僕が生を受けたことを、彼らが期待を確実な喜びに換えるのはもう間もなくのことだ。

 母はいま浅い眠りのなかで僕を呼んでいる。

 父はいびきの裏側で僕の誕生を思い描いている。

 僕は知っている。

 この母と父のそれまでにも善行があって僕を迎えていることを。

 こうして輪廻は繋がっている。

 誰と(えにし)を持つかは自分の過去が決めている。

 ちょっとずつだが逢うべきひとが功徳を積んだところに近づいている。

 それは僕にとっても定められた因果だったのである。

 僕は想像してみた。

 母の顔を覗いた。

 弁天様みたいだった。

 まだない首を伸ばして父の顔を覗いた。

 えべっさんみたいだった。

 僕の想像は僕を布袋様(ほていさま)のような顔で仕上げる。
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