第15話

文字数 248文字

 数えることを覚悟したなら、過去をも思い出せる。

 三つ前の命は(はかな)い時日だった。

 僕は二十四回目のミヤマクワガタの雄に生まれ落ちた。

(その呼び名は人間の勝手につけたものでクワガタ仲間ではンィッツで通っていた)

 幸い、二十四回目は人間にも鳥にも捕まることもなく穏やかにどこかの島の深い山中で過ごした。

 けれど過ごした日は土の中で生育した時も合わせても人間で数える三百四十一日間で、

 成虫になってからは大好きな季節を二度は味わえなかった。

 尤(もっと)もこれはその前の二十三回も似たようなものだったが。
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