第43話
文字数 279文字
長い漂流に預かるうちに、
僕の死んだ声もこの世界やあの世界のあちこちに残されているはずだが、
僕には親の意思で堕されたことはない。
その生命の子孫繁栄の習慣から数多くの同胞たちと一斉に産み落とされることはたくさんあっても、
そこから娑婆に出ること叶わぬ頓挫はいくつもあっても、
僕には親から望まれぬ生まれ方をした覚えがない。
覚えがないのだからきっと僕の漂流に刻まれていない。
だから、娑婆に出られず命を削り出された声を僕は聞きたい。
僕が幸福になるのであればその分その声を僕は聞かなければならない。
声々もそう云っている。
だから僕に聞こえるのだって。