第十八話 解析班
文字数 2,226文字
夜、巧人は通信端末を手に取り、いつものようにクラフトル管理局の近藤局長に定時連絡を入れた。
簡単に説明すると、暴走クラフトルはクラフトル粒子を食べているのよ。
わたしたちの世界はクラフトル粒子があちこちに散らばっているわ。だから、暴走クラフトルはいつでも食事ができる。なので、下手なことをしなければ襲ってこない。だからって放置はできないけど……。
けれども、今、巧人君がいる世界では、クラフトル粒子が圧倒的に少ない。だから、暴走クラフトルは常にお腹が空いていて、クラフトル数値の高い人間を襲うのかもしれないわね。
暴走クラフトルが消えた時の光の解析が完了しました。
通常光るものに関していうと、あれば暴走クラフトルの意思のようなものです。
発生条件はわかりませんが、暴走クラフトルには感情があると思われます。
それと、その光を強制的に発生させることが可能になりました。
一応実験の詳細を伝えます。
-10000クラフトル(暴走クラフトル)と10000クラフトル(カプセル)の衝突実験にて、光の発生が見られました。
融合してクラフトル数値が0になると、激しい光を発するようです。
一応、その光で猿を平行世界に飛ばす実験に成功しています。
その結果、猿はこちらの世界へと帰還しました。
実験回数は3回。その全てが帰還に成功しています。これにより、光は二つの世界をつないでいるという結果が得られました。
ですが、強引に出した光については別です。
実験データによれば、暴走クラフトルによる侵食波、いわゆる断末魔の悲鳴のようなものが観測されています。それが、猿に影響を及ぼしたという結論です。
今、解析班のデータをもとに、クラフト班と共同して汚染に耐えられるストラクチャーユニットを開発しています。
汚染はストラクチャーユニットにまで及ぶので、開発は難航していますが、きっと良い結果を出してくれると、そう信じています。
唯一ストラクチャーユニットなしでエクスチェンジができ、それでいて、無類の絶対防御の形態を持つ彼女になら、今の状況でも転移可能よ。精神汚染への耐性は、すでに実験済みだから、安心。
解析班とクラフト班での光実験のデータが何者かによってハッキングされ、盗まれた形跡があるのだよ。
悪意ある者の仕業に違いないが、盗まれたデータがデータだけに、もしかすると、そちらの世界に影響がでるかもしれん。それを頭に入れて行動してほしい。以上だ。
だが、巧人が安全に元の世界に戻れる方法は、まだ見つかっていない。
そして、管理局でのハッキング事件。
不穏な動きがある中、巧人は平行世界の調査を続行するのであった。