第十九話 金色の髪の女性
文字数 1,732文字
巧人は、Z市の地域の調査を行っている。
政治、文化形態、言語等の相違、クラフトル数値の高いクラフター適正者の数、事象の頻度に関しての調査だ。
近藤局長には、時間がかかってもいいとは言われているのだが、巧人は一心不乱にハイペースで情報の収集を行っていた。
平行世界に影響を及ぼしているのは自分の元いた世界。その影響がこちらの世界に出ているということもあり、責任を重く感じているようだ。
(巧人自身には責任はないのだが……)
調査したデータが何かの役に立てば、こちらの世界への被害もなくなる。そう信じて巧人は調査に励むのであった。
食事は、朝と夕方、2回に分けて譲葉がおにぎりを調達してくれている。
けれども、さすがに毎日だと巧人も罪悪感を感じてくる。
譲葉は、面白いゲームをさせてもらったお礼といっているようだが、それが巧人には少し心苦しかった。
一般の少女を暴走クラフトルと戦わせて危険にさらし、そのうえ食料をせびっているようなものだ。
本当なら、報酬を出さなければならない立場だ。こんな状況を、いつまでも続けるわけにはいかない。
巧人の姿は推定16~17歳ぐらいだ。仕事をするならアルバイトが適切なのだが、それをするにしても履歴書が必要だ。いろいろと面倒な手続き上の問題が浮上する。
これから先のことをいろいろと考えながら、巧人は拠点としている物置小屋へと足を運んだ。
その時だ!
物置の側の小道の反対側の茂みから激しい発光現象が始まった。
巧人は、クラフトの力が詰まったカプセルを握りしめ、身構えた。
だが、光の中から出てきたのは……白い正装をした金髪の綺麗な女性だった。
あなたの管理下にあるクラフターストライカーのストラクチャーユニットに、これを食べさせて。
暴走クラフトルのマイナス数値の強さがわかるようになるから。
あと、あなたの場合はそれを身に付けているだけでいいそうよ。
間違っても食べないでください。
巧人は、草香にジュラルミンケースのトランクを渡された。それは非常に重く、あまりの重さに巧人は腰が抜けそうになっていた。
その日巧人は、クラフトル管理局から転移してきた草香の買い物に付き合わされ、無駄な時間と体力を消費するのだった。