第二十六話 バーチャルリアリティー
文字数 2,157文字
巧人と草香は電車を降り、街を眺める。
────A市────
商業ビルが立ち並ぶ都市。たくさんの電化製品、そして、異常に発達した娯楽文化、人通りの多い活気のある町。
今の巧人にとっては、始めてみる光景だった。
その前は、わたしたちの世界にも、同じようなものは蔓延していたわ。
というか、この国特有のものが多いけど……。
クラフター能力じゃなく、人の手で作成されているものが多いから、味があるのよね。
あー全部買い占めたい!
すると、そのビルの入り口には、どこか見覚えのある少女の姿があった。
係員の合図で、一人の少年がルーレットのボタンを押す。
すると、ルーレットの盤上の光がくるくると回りだし、やがてゆっくりと……そして止まった。
止まった先は、当たりのラインの上だった。
ファンファーレの音が鳴り響く。
やつら……何やってるんだこんなところで。
それに、様子が変だ。
マイナスクラフトル数値が微量としか表示されない。
計測できないぐらい少ないってことなのか?
それに、どうしてあんな恰好で堂々としていられるんだ。
これは、巧人の持つ、一度見つけたクラフトル反応を追跡できる能力である。
さすがに、正面からの追跡はまずい。
二人は他の入り口を探し、都合よく開いていた裏口から侵入する。
その後、ビル内部にて、慎重に行動。
警備員と監視カメラをうまく避けながら、サードの反応を追う。
すると少年は、無数に並べられた、メカメカしく未来的な、最新VRシステムのカプセル見て興奮した。
開いたカプセルはゆっくりと閉じ始める。
二人はおぞましい光景を目にした。
フロアいっぱいに広がる暴走クラフトルで作られた無数の黒い繭。
それらは綺麗に並べられ、それらを繋ぐように張り巡らされた管が、何かを吸い上げるように脈打っている。
そして繭の中からは、人間の痛々しいうめき声が聞こえてくるのだった。
おれはまだ戦える……いつ終わるの……回復たのむ……いつ終わるの……やっとボスだ……いつ終わるの……仲間になってくれないか……いつ終わるの……転生した……いつ終わるの……ポーションない……いつ終わるの……狩りいこうぜ……いつ終わるの……今日ここで寝るわ……いつ終わるの……死にたくない……いつ終わるの……もういやだ……いつ終わるの……リセットしたいな……いつ終わるの……そんな装備で……いつ終わるの……こんな世界……PKされた……いつ終わるの……もう、疲れた……いつ終わるの……大丈夫か……帰りたい……いつ終わるの……もうずっとここにいていい……いつ終わるの……これ、クソゲーだろ……いつ終わるの……もう無理……いつ終わるの……ゲームバランス悪すぎ……いつ終わるの……問題ない……いつ終わるの……いつ終わるの……いつ終わるの……