第十一話 答えは保留
文字数 1,510文字
だが、暴走クラフトルの転がる速度が遅くなるだけで、凍ることはなかった。
解析。完了。
暴走クラフトルの刀状の物体に超音波振動を確認。
凍結後、振動の摩擦熱により融解。
現在のフリージング能力では凍結不可能。
第二形態への移行を推奨します。
』
「クラフトラフトエクストリーム」と叫んでください。
』
リミッター解除。
そして、それらが少女の体に収束し、新たな形態を作り出した。
青く輝き、冷気をまとったその姿は、まるで妖精のようだった。
十分な冷気が剣に内包されています。
あとは、攻撃対象に向かって剣を振るってください。
衝撃波が飛びますので、近づく必要はありません。
』
それを待ち受けるかのように、少女は立ちはだかり、剣を振るった。
衝撃波は白く輝き、回転する暴走クラフトルを分断する。
そして、衝撃波が切り裂いた箇所から無数のつららが突き出し、暴走クラフトルの動きを止めた。
次の瞬間、暴走クラフトルの黒い刃は崩れ落ち、コアが露出。
露出したコアは、すでに真っ二つの状態だった。
割れたコアは目も眩むような激しい光を放ち、崩壊していく。
風の音、鳥の鳴き声、動き出した街の音が聞こえ始める。イコライジングの効果は、消失していた。
巧人は耳栓を外し、少女はイヤーマフを外す。
それと……あなたの告白はボイスレコーダーに取っておきました。
大事に保管しておきますので、そのつもりで。
なぜかものすごく眠いのでここで仮眠します。襲わないでくださいね。
では、おやすみなさい。
その後、ルリチルはすやすやと眠る菖蒲の周りをゆっくりと飛行する。
飛行のできるストラクチャーユニットならではの警戒行動である。
巧人は考える。
なぜこんなにも強力なクラフトル数値を持った少女が存在するのか。
そして、今まで遭遇したことのない強力な暴走クラフトル。
なぜ、そんなものが出現するのか。
もっと情報を集めなければならない。
巧人は、菖蒲をルリチルに任せて公園を離れ、調査を再開するのであった。