第二十三話 心の力と名前の力
文字数 3,751文字
さあ、いつまでもつかなあぁ~~。
キャハハ!
早くガメオベラになっちゃえ!
(※ガメオベラ=Gameover)
草香の絶対防御は、「
神々の守護」が発動している間はいかなる攻撃をも無効化する。
だが、防御をすることで、相手の攻撃力に比例した体力を消費する。
さらに、第二形態は、変身しているだけで体力を消費する形態である。
そのため、草香がエースだとしても、長く受け続けることは実質的に不可能なのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方そのころ、拝殿内に避難している
巧人たちは、戸の隙間から
草香の戦闘を眺めながらこの状況について話し合っていた。
ああ。すごく厳しい状況だ。
最悪、この場を放棄しなきゃならない可能性が出てきた。
草香も撤退を考えてるとは思うのだけど……。
でも……それなら、すぐにこっちに合流するはずだよね。
どうして、まだ戦ってるんだろう。
それは、戦わざるを得ない状況に追い込まれているからだと思います。
例えば、わたしたちを狙ってきているとか……。
もしそういう状況なら、草香さんのような属性だと、無理にでも守ろうとするような気がするのですよ。
なるほど……わかった。
ここはひとまず……君たちの意見を聞きたい。
ここは、わたしたちの世界。
確かにこの状況は、巧人くんの世界からの影響かもしれない。
でも、降りかかる火の粉はこっちの世界にも及ぶのだから、それを黙って見ていちゃいけないと思う。
それに、わたしたちにだって、何か出来ることがあると思う。ううん……きっとある!
それも……そうね……。
まだ、決着がついてないのに……勝手にここでやられて欲しくはない。
わたしたちにだって、こんな能力があるんだから……。
絶対、何かできるのです!
打てるチャンスがあるなら、バントの指示を無視してでも、ホームランを打ちたい!
(だからレギュラーになれないのかな……)
緊急事態です!今は、そんなことを考えている暇はありません。
巧人様は、本当に組織の人間なのですね。
ならば一度、始末書っていうのを、書いてみたいものですよ。
と、言ってみたりします。
わかった!
けれど、もし駄目なようなら撤退する!
これだけは絶対だ。じゃあ、行ってこい!
ストラクチャーユニット オールロック解除!
紅葉たちは、迷いなく声をそろえて叫ぶ。
「「「クラフトラフトエクスチェンジ!」」」
拝殿内は粒子の激しい光に覆われる。
その後、変身が完了した。
再び変身した
紅葉たちは、拝殿を飛び出して
草香の援護に向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そんなわけにはいかないのよ!
(く、苦しい……巧人たちが撤退してくれていればいいのだけど……)
だが紅葉たちは、そんな草香の期待をを裏切るかのように、戦場に舞い戻ってくるのであった。
あっれー!
ごちそうがこっちにやってきたー!
はやく~、食べたいよー!
キャハハ!
(この娘たちに心配させてしまった……わたしもまだまだ未熟……)
(心の力……心の力……)
守りたい……(ううん……)
守らなきゃ……(いいえ……)
守る……(そうじゃない!)
絶対に守る……(もっと!)
全部、守る!
紅葉は願った。
願いは、ただ、ひたすら守り抜きたいという思い。ただ、それだけだった。
すると、その願いに反応したのか、構えていた盾が突然光り始めた。
やったわね……それが、心の力……。
でも……まだ足りないわ。
そうね、それを形にする名前が必要。
そう、名前……。
必殺技の名前よ!
模擬戦の時の【スピアーラッシュ】
あれはスキルじゃなくて必殺技よ。だからあなたは盾越しにダメージを受けたの。
名前は技のイメージを固定化するのよ。
だから、適当につけては駄目。
自分がイメージする最強のイメージ。最強の盾の名をイメージして!
それが、あなたの必殺技になる!
なら……わたしの知ってる最強の盾は……これしかない……。
設定項目追加。
必殺技イメージ確認。
イメージ固定。
キーワード設定。
必殺技名【イージス】登録完了。
盾の形状は変化し、顔の文様が浮き出る。
そして美しい輝きを放ち、神話の女神が持つと云われる最強の盾、イージスとなった。
何そのヘンテコな顔の盾!
ブッサイク~ブッサイク~ブッサブッサ……
ぶっ潰してやるー!
(あとは、大丈夫みたいね……あなたたちに託したわ……)
草香の盾の輝きは失われた。
その後、草香は力を使い果たし、満足げな笑みを浮かべてその場に倒れこんだ。
(草香さんが倒れた。それに、この攻撃、受けるので手一杯……こんな攻撃を草香さんは一人で……。これでは反撃なんて……)
菖蒲はステッキを振りかざす。そして、心に強くイメージを念じ始めた。
心の力はスキルの力を増大する。
「アイスクリスタル」
(だめ、これでは……もっと……)
もっと大きく……(※アイスクリスタル5メートルほどに巨大化)
もっと硬く……(※アイスクリスタル硬化)
もっと多く……(※アイスクリスタル増殖)
設定項目追加。
必殺技イメージ確認。
イメージ固定。
キーワード設定。
必殺技名【アイスメテオ】登録完了。
菖蒲は無数の巨大な氷の塊を作り出し、それを全て
サードめがけて勢いよく飛ばした。
氷の塊は、全てサードに命中する。
その攻撃はサードをヒットバックさせ、マイナスクラフトル波動の攻撃を停止させた。
ねえなにこれ、痛い。痛い痛いいったああああい!
わたし生きてるーーーー!
痛いの気持ちいいいいいい!
譲葉は弓を構え、
サードに狙いを定めた。
そして、心を集中する。
ええいっ!
悪霊退散!
邪気退散!
悪魔退散!
破魔降臨!
設定項目追加。
必殺技イメージ確認。
イメージ固定。
キーワード設定。
必殺技名【閃光の破魔】登録完了。
譲葉は、
サードに向けて矢を放った。
その光り輝く鋭い矢は閃光のように飛翔し、サードの胸部を貫通、破壊した。
一時的に
サードの動きは止まった。
だが、様子を見る限り、攻撃が効いている様子はなかった。
痛気持ちいイイイイ!痛……痛……あれ……痛くない……。
あれ……胸、穴開いてる……。
そうか……胸がないから痛くないんだ。
倒せてない……ごめんなさいです。
コアが見えない……というか、コアがない!?
おまえ……緑の……なんだその胸……。わたしの食べたのか!
だからそんなに大きいんだ……返せ!
返せ返せ返せ返せええええええええ!
あなたの
胸は、今さっき吹き飛んだんです~!
これはわたしの胸なんです~!
サードは、譲葉に腕を向けて手を広げ、波動の攻撃態勢に入った。
落ち着いて! もう一度攻撃しよう!
わたしが前に出る!
サードが攻撃に移るその瞬間だった。
再び、震度6弱の地震が発生する。
その後、前回と同じく神社の遥か上空が激しく光り。
光は一直線に落ちて、参道の横の石灯籠を破壊する。
そして、光の落ちた先から、黒いオーラが噴き出す。
やがて黒いオーラは収束し、一人の少女の姿に変化した。
出現した少女は、周囲に強烈な殺気を振りまいている。
な……馬鹿な!
-100000クラフトル!
今戦った人型の2倍の強さなのか!?
ああ、セカンド姉さま!胸が、胸がね、なくなっちゃった!
だーかーらー……なんでこんなところで道草くってるの?
あとからいっぱい食べられるでしょ。我慢しなさい。
今はファーストとあの方との合流が先よ!
二人目の
人型暴走クラフトル、
セカンドは、胸に穴の開いた
サードの頭を左手でつかんだ。
そして右手をかざし、二人の周囲に黒い球体を作り出す。その球体は、ゆっくりとセカンドとサードの体を覆い始める。
お姉さまと一緒に転移だー!いっしょに頭の中グチャグチャー!
キャハハ! キャハハ!
黒い球体に
サードと
セカンドは飲み込まれる。
その次の瞬間、黒い球体は光を発し、この場から消失するのだった。
(完全に無視されていた……俺たちのことなど、眼中にないのか……)
嵐が去り、神社の境内はいつもの静けさが戻った。
人型暴走クラフトル。セカンドとサード。
やつらがほのめかした、ファーストとあの方の存在。
人型暴走クラフトルとは、いったい何者なのか。
そしてやつらは、この世界でいったい何をたくらんでいるのだろうか……。
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