譲葉は蜘蛛型暴走クラフトルの出現と同時に赤く光るコアを視認し、それを狙って弓を引いた。
矢は、
蜘蛛型暴走クラフトルの頭の部分に突き刺さる。
だが、刺さったのはほんの少しだけだった。全く効いていない。
あれ、いつものなら倒せるのに……。
固すぎるよぉー……。
蜘蛛型暴走クラフトルは、刺さった矢を無視して巧人と譲葉に背を向けた。
蜘蛛型暴走クラフトルは気張ったような声を上げる。
次の瞬間、腹の先端から白い粘液のようなものが飛び出した!
その糸は、蜘蛛の糸状に広がり、巧人と譲葉に絡みつき、二人の動きを封じた。
それは多分……蜘蛛の糸だ!
くそ……このままでは、俺たちはやつに取り込まれてしまう!
あきらめるのはまだ早い!
君の力があれば、この場を切り抜けられる!
無理ですよ。だって動けないし。ネバネバするし。ゲームオーバーです。
いいか、今から俺がこの糸を吹き飛ばす、そして、こいつに対抗するために
ストラクチャーユニットを生成して、譲葉を
クラフターストライカーに覚醒させる。
ストラクチャーとかクラフターとか、本当に大丈夫なんですか?
は……はい、言いました!
お代官様!
……いえ、巧人様!
じゃあ、俺がこの蜘蛛の糸を吹き飛ばしたら少しの間、やつの注意をそらしてくれ。
巧人は、クラフトの力が詰まったカプセルを取り出し、それを解放する。
くらえ! リリースクラフト! 「クラフトペイン」!
巧人のスキルは、蜘蛛の糸を分断し、それを浄化した。
二人は蜘蛛の糸の呪縛から解放された。
(なにこれ! すごい! 魔法使いは存在するんだ!)
…………。
はっ……悪霊の注意を引きます!
巧人は、クラフトの力が詰まったカプセルと宝石箱をとりだし、その宝石箱にカプセルをセットした。
生成だ!
リリースクラフト! 「ストラクチャーユニットロールアウト」!
カプセルと宝石箱は、光を放ちながら合成を始めた。やがてそれは、動物の形を成し、狐のような姿へと変貌を遂げるのだった。
譲葉は、追いかけてくる蜘蛛型暴走クラフトルから必死で逃げている。
蜘蛛型暴走クラフトルのおとりになっている譲葉に向かって、巧人は、生成されたストラクチャーユニットを投げつけた。
はい!
巧人様!
「クラフトラフトエクスチェンジ」!
声紋認証記録、初期設定完了。
クラフターイメージ構築。完了。
エクスチェンジ開始。
狐型ロボットは粒子となり、激しい光を放ちながら譲葉の体を覆った。やがて粒子は収束し、譲葉をクラフターストライカーへと変身させた。
へ……変身した……!
しかも、メガネがないのに、良く見える!
わたしは、
ストラクチャーユニットの
コンです。
クラフトル効果により、視力補正がかかりました。
攻撃対象へは、弓矢での攻撃を推奨します。
それが君の力の具現化なんだね!
その形態……名付けるなら……。
「草原の狩人」
その形態ならやつを貫ける!
譲葉が
蜘蛛型暴走クラフトルに向けて弓を構えると、片眼鏡が右目に装着された。
その視界には、スカウターでも付けたかのように、目標との距離、風向き、カーソルが表示される。
(赤いのがはっきり見える……やっぱりあの赤いのが弱点!)
譲葉の放った矢は、
蜘蛛型暴走クラフトルのコアを貫いた。
弱点のコアを損傷した蜘蛛型暴走クラフトルの体は崩れ去る。そして、コアは、目も眩むような激しい光を放ち、塵と化した。
まさに、一撃必殺である。
すごい、第二形態になることなく、一撃で仕留めるなんて!
(でも、なんだ、この違和感は……まだマイナスクラフトルの反応が消えていない……)
脅威は消え去った。
だがそれは、ただの始まりに過ぎなかった。
参道の周囲に、複数の光が二人を取り囲むように出現する。
そして、大量の蜘蛛型暴走クラフトルが姿を現したのだった。
なんだこれ! いくら何でも、これじゃあ数が多すぎる!
ど……どうしよう……こんなにいっぱい……相手にできるかなぁ……。