第四十七話 (1vs1)✖3
文字数 3,271文字
人型ダーククラフトルとクラフターストライカーたちは、すぐに柱を離れる。
まず、譲葉とサードが対峙した。
サードには、譲葉に対し、少しだけ因縁めいたものがあるようだった。
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だが、譲葉はそれを軽くかわし、即座にツインハンドリボルバーで反撃を開始した。
続けてサードは衝撃波を放つが、譲葉はそれをことごとくかわし、踊るように攻撃を加える。
けれども、サードを直撃した譲葉の弾丸は、まるで効いている様子はない。まるで豆鉄砲だ。
サードは右手を開いて正面に掲げる。
すると、その指から小さな赤いコアのようなものが複数飛び出した。
飛び出したコアは、周囲に散らばっているダーククラフトル粒子を絡み取り、徐々に実体化していった。
形作られた姿は、先ほどのファンタジーの世界でお目にかかったものばかりであった。
数十体ほどの敵が譲葉を襲う。
譲葉は、すぐに雑魚モンスターの駆除に入った。
いつものようにツインハンドリボルバーを乱射する。
けれども、コアが小さすぎるせいか、ほとんど命中しない。
動く小さい的に対しては、オート照準機能はあまり役に立たないようだ。
結局、敵の体を打ちぬくことができても、コアが生きていればすぐに再生してしまう。
これでは意味がない。
オート照準機能では小さなコアに当てることが難しいと判断した譲葉は、それを解除し、マニュアル射撃に切り替える。
しかしながら、動きながらの戦闘ではなかなか照準が定まらず、譲葉は苦戦を強いられた。
その後もサードは、どんどん雑魚モンスターを増やしていく。
菖蒲は、セカンドと対峙する。
白く輝く冷気の塊がセカンドの体を包み込み、氷結させる。
……だが、次の瞬間、セカンドの体を凍らせた氷は一瞬にして蒸発してしまった。
どうやら、そのオーラが菖蒲の氷を蒸発させたようだ。
火はこのゴミみたいな人間たちの生活を豊かにしてきた。
闇を照らす光、調理、そして時には便利な創造物を生み出す力になる。
でもね、その本質はただの自然現象でしかないの。
使い方を間違えた人間は、倍の炎で焼かれるの。
火遊びは、体に毒よ……ふふふ……。
その瞬間、菖蒲の足元から火柱が発生した。
菖蒲は即座にそれをかわすが、少しだけ揺れた髪を焦がす。
菖蒲は、その火柱をフリージングで凍結しながら避け続ける。
だがそれは、自分の少ない体力をじわじわと削るだけの行為に過ぎなかった。
ファーストと対峙したのは紅葉だった。
異様な威圧感を振りまき獲物を見るような目で紅葉を圧倒するファースト。
紅葉は恐怖する。
だがそれは、敵の威圧に恐怖するといったものではなかった。
まるで、全てがファーストの手中にあるかのような、そんな感覚に恐怖していたのだった。
それでも紅葉は、その重くのしかかる恐怖を無視してファーストに問いかける。
生きるためのルールがあっても、それは変わらない。
どこにでも弱者は存在し、強者が存在する。
人間は強者になりたい。
奴隷だって平民になりたい。
平民だって貴族になりたい。
貴族だって王様になりたい。
必ず、そういった願いを叶えようとする人間は存在する。
だが、そんな人間の欲求というものは、世界を滅ぼしかねない力にもなる。
全てを手に入れよう。
そう思えば、それだけの力が必要になる。
だから、それだけの力を欲する。
その力は、いったいどんなものだ?
もし、それを手に入れたら?
少し考えれば、貴様にもわかるはずだ。
そうしないために、この世界を創り変える必要があり、我々がそれを管理する必要がある。
愚かなことに、そんな人間は、脳が達成感を味わえば、だいたいは満足する。
満足しなければ、また与えれば良い。
たかが100年、飽きがこない世界を生きていればいいだけの話なのさ。
どうだ、素晴らしいと思わないか。
そうだねぇ……そういう人たちほど、怖いものはない。
そいつらは強者の力になる。
流されるまま強者に加担する。
そして思考を停止するのさ。
強者の言いなりになる機械と言ったところか。
ただ、一直線に怒りを込めて振るった。
だがその剣は、ファーストの左腕で簡単に止められてしまう。
紅葉の剣は、軽くファーストの腕に薙ぎ払われた。
そしてファーストは、紅葉の間合いに踏み込み、拳を黒いオーラで固めてボクサーのように殴り掛かってくる。
それは、重い拳の連打だった。
紅葉は、それに反応し盾で防御を固める。
だが、盾越しにダメージを受け始めた。
少女たちは戦う。
だが、今はまだ、力を温存しなければならない。
そしてそれを悟られてはならない。
その制約のせいで、自ら不利な戦いを強いられるとしても。
勝敗の行方は、ダーククラフトルの供給を断つという巧人の作戦に託されるのであった。