第四十七話 (1vs1)✖3

文字数 3,271文字

戦闘が始まった。

人型ダーククラフトルクラフターストライカーたちは、すぐに柱を離れる。


まず、譲葉サードが対峙した。

サードには、譲葉に対し、少しだけ因縁めいたものがあるようだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

このデカい胸の女はわーたーしーがーたーべーるううぅぅ!

この前取られた胸、返してもらうー。

キャハハ!

これはあなたのものじゃありません!

それに、今は、胸……ちゃんとついているじゃないですか。

だまれ! 雑魚!
サードは腕を振り、譲葉に向けて黒い衝撃波を放つ。

だが、譲葉はそれを軽くかわし、即座にツインハンドリボルバーで反撃を開始した。


続けてサードは衝撃波を放つが、譲葉はそれをことごとくかわし、踊るように攻撃を加える。

けれども、サードを直撃した譲葉の弾丸は、まるで効いている様子はない。まるで豆鉄砲だ。

(何度も変身していたせいか、体が馴染んで動きやすい。でも、あまり攻撃が効いてないのです。時間稼ぎにはなるのでしょうけど……)

キャハハ!

おもちゃで遊ぶのが好きなの? 

じゃあ、こっちもおもちゃを用意するよ~!

サードは右手を開いて正面に掲げる。

すると、その指から小さな赤いコアのようなものが複数飛び出した。


飛び出したコアは、周囲に散らばっているダーククラフトル粒子を絡み取り、徐々に実体化していった。

グゴゴゴ……       
ヒュウヒュウ……
ウエッ……ウエッ……       
ヒャッハー!
ゲームのキャラ!?

形作られた姿は、先ほどのファンタジーの世界でお目にかかったものばかりであった。

数十体ほどの敵が譲葉を襲う。

食らうのです!

譲葉は、すぐに雑魚モンスターの駆除に入った。

いつものようにツインハンドリボルバーを乱射する。


けれども、コアが小さすぎるせいか、ほとんど命中しない。

動く小さい的に対しては、オート照準機能はあまり役に立たないようだ。

結局、敵の体を打ちぬくことができても、コアが生きていればすぐに再生してしまう。

これでは意味がない。


オート照準機能では小さなコアに当てることが難しいと判断した譲葉は、それを解除し、マニュアル射撃に切り替える。

しかしながら、動きながらの戦闘ではなかなか照準が定まらず、譲葉は苦戦を強いられた。


その後もサードは、どんどん雑魚モンスターを増やしていく。

キャハハ!

踊ってる! た~のしそ~!


もっとおっどれ~!

キャハハ! キャハハ!

さっきのゲームとは大違いです。

コアが小さすぎてオート照準じゃ厳しいのです。


草香さんの言ったことが分かった気がします。

もっと鍛えておけばよかったのです。


補正なしでどこまでやれるか……。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



菖蒲は、セカンドと対峙する。

あなたは偉大なるファースト様やあの方、そして……わたしの敵になるのかしら。

わたしは、草香さんを助ける。ただ、それだけ。
草香

ああ、あの方が取り込んだエサのことかしら。

エサ……じゃない……!


フリージング!

菖蒲は即座にステッキを振り上げ、氷結の攻撃を放った!

白く輝く冷気の塊がセカンドの体を包み込み、氷結させる。


……だが、次の瞬間、セカンドの体を凍らせた氷は一瞬にして蒸発してしまった。

冷たいわね……。

さぞかし心も冷たいのでしょうね……フフフ……。

セカンドは、体に炎のようなオーラをまとっていた。

どうやら、そのオーラが菖蒲の氷を蒸発させたようだ。

(勝負は一瞬でつけなくちゃいけない。でも、巧人さんがダーククラフトルの供給を断つまで、手が出せない)

火って……いいでしょう。

火はこのゴミみたいな人間たちの生活を豊かにしてきた。

闇を照らす光、調理、そして時には便利な創造物を生み出す力になる。


でもね、その本質はただの自然現象でしかないの。

使い方を間違えた人間は、倍の炎で焼かれるの。

火遊びは、体に毒よ……ふふふ……。

セカンドは、体にまとった炎を揺らしながら片膝を突き、地面に手を当てた。

その瞬間、菖蒲の足元から火柱が発生した。


菖蒲は即座にそれをかわすが、少しだけ揺れた髪を焦がす。

そうね。

でもあなたのその炎は、自分の身を焦がす炎。

全て燃え尽きれば、あなたはただの炭と化し、この漆黒の闇の一部になるだけ……。

おもしろいことを言うわね……。

それまで、あなたの体はわたしに焼かれずに済むかしら……。

セカンドの容赦ない無数の火柱が菖蒲を襲う。


菖蒲は、その火柱をフリージングで凍結しながら避け続ける。

だがそれは、自分の少ない体力をじわじわと削るだけの行為に過ぎなかった。

(このままだとまずい……効率よく避ける方法を考えないと……)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



ファーストと対峙したのは紅葉だった。

異様な威圧感を振りまき獲物を見るような目で紅葉を圧倒するファースト


紅葉は恐怖する。

だがそれは、敵の威圧に恐怖するといったものではなかった。

まるで、全てがファーストの手中にあるかのような、そんな感覚に恐怖していたのだった。


それでも紅葉は、その重くのしかかる恐怖を無視してファーストに問いかける。

なぜ、こんなことをするの?

何が楽しいの?

楽しい? 楽しんでるのは人間のほうさぁ。

そう、憎しみ、奪い、そして殺し合い、そして頂点を目指し、全てを支配する。

わたしたちはそんな世界を望んでいる人間の手伝いをしているだけ。

な……なんなの……それ……。
生物の原点は弱肉強食。

生きるためのルールがあっても、それは変わらない。

どこにでも弱者は存在し、強者が存在する。


人間は強者になりたい。

奴隷だって平民になりたい。

平民だって貴族になりたい。

貴族だって王様になりたい。


必ず、そういった願いを叶えようとする人間は存在する。

だが、そんな人間の欲求というものは、世界を滅ぼしかねない力にもなる。


全てを手に入れよう。

そう思えば、それだけの力が必要になる。

だから、それだけの力を欲する。

その力は、いったいどんなものだ?

もし、それを手に入れたら?

少し考えれば、貴様にもわかるはずだ。


そうしないために、この世界を創り変える必要があり、我々がそれを管理する必要がある。

愚かなことに、そんな人間は、脳が達成感を味わえば、だいたいは満足する。

満足しなければ、また与えれば良い。

たかが100年、飽きがこない世界を生きていればいいだけの話なのさ。


どうだ、素晴らしいと思わないか。

だから、こんな世界を創ったの?

でも……そうじゃない人間だっている。


それに、そんな人たちばかりじゃない!

それはただ、流されて生きる人間たちのこと言っているのかい?

そうだねぇ……そういう人たちほど、怖いものはない。


そいつらは強者の力になる。

流されるまま強者に加担する。

そして思考を停止するのさ。

強者の言いなりになる機械と言ったところか。

おかしいよ!

それじゃあ、みんな強者の言いなりみたいじゃない!

もちろん貴様には、それは到底理解できないこと。

けれども、それは理解しなくても良いことだ。

そんなことを理解しなくていい世界が間近に迫っているのだからねぇ……。

そんなでたらめな世界!

わたしたちには必要ない!


みんなを解放して!

草香さんを返して!

ならば、力を示すがよい。

このわたしを超えて見せよ!

言われなくったってぇ!
紅葉は、剣を振るった。

ただ、一直線に怒りを込めて振るった。

だがその剣は、ファーストの左腕で簡単に止められてしまう。


紅葉の剣は、軽くファーストの腕に薙ぎ払われた。

弱者!

弱者!

弱者!

弱者!

弱者あああああ!

そしてファーストは、紅葉の間合いに踏み込み、拳を黒いオーラで固めてボクサーのように殴り掛かってくる。

それは、重い拳の連打だった。


紅葉は、それに反応し盾で防御を固める。

だが、盾越しにダメージを受け始めた。

(心の……力……でも……今はまだ……使えない……なんとかしなきゃ……)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



少女たちは戦う。


だが、今はまだ、力を温存しなければならない。

そしてそれを悟られてはならない。

その制約のせいで、自ら不利な戦いを強いられるとしても。


勝敗の行方は、ダーククラフトルの供給を断つという巧人の作戦に託されるのであった。

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登場人物紹介

秋風 紅葉

(アキカゼ クレハ)


●中学2年生


●13歳


●誕生日 9月22日 乙女座


●血液型 B型


●部活 ソフトボール部(補欠)


●好きな食べ物 イチゴ


●趣味 おやつを食べること


●性格 好奇心旺盛な夢見る少女。単純でおっちょこちょいだが責任感が強い。天然だけど熱血。



部活の帰りに守本巧人という謎の人物に出会う。その時、黒い巨大な物体に遭遇する。

その後、巧人クラフトル数値が高いことを告げられ、成り行きでクラフトル能力を解放させられクラフターストライカーになる。



●第一形態 「暁のナイト

 バランス型の戦士 剣と盾で相手を圧倒する。


●第二形態 「暁のヴァルキリー

 攻撃特化型。槍で相手を粉砕する。


イメージイラスト きゃらふと様より

竜胆 菖蒲

(リンドウ アヤメ)


●中学2年生


●14歳


●誕生日 4月30日 牡牛座


●血液型 A型


●部活 帰宅部


●趣味 読書


●好きな本 ライトノベル全般


●性格 大人しく、常に冷静。ちょっと毒舌。静かな場所が好き。外出時は防音イヤーマフを装備している。(たまに耳栓)



クラフトル数値が異常に高い少女。

巧人に愛の告白をされ、気がついたら、クラフターストライカーになっていた。




●第一形態 「空色のウィッチ

 氷結属性の攻撃が可能。

 ユニークスキルイコライザーベル

 使用することにより、任意の周波数帯の音を操作できる。


●第二形態 「極氷の魔剣士

 氷結属性の魔剣での強力な攻撃。

 衝撃波で敵を凍らせ、一刀両断する。


イメージイラスト きゃらふと様より

神楽月 譲葉 

(カグラヅキ ユズハ)


●中学2年生


●13歳


●誕生日 11月29日 射手座


●血液型 O型


●部活 弓道部


●趣味 アニメ・ネットゲーム


●性格 何をやっても駄目。そのかわり、弓矢には自信がある。アニメやゲームの話になると盛り上がるが、普段は大人しい普通の中学生。



家はうどん屋だが、小さいころからすぐ側の神社で巫女の仕事を手伝っていて、将来、巫女を目指している。

弓が得意なのは神社にあった破魔矢に興味を持ち、その影響で弓術を覚えたからである。

黒いもの(暴走クラフトル)が見えるようになったのは、巨大隕石消失事件のあったその直後からだという。



●第一形態 「草原の狩人

 弓矢での攻撃。貫通能力を持つ。

 譲葉は、暴走クラフトルのコアを視認できるので、固い敵じゃなければ一撃必殺で倒すことができる。


●第二形態 「新緑のガンナー

 銃火器系武器を使用。

  ツインハンドリボルバー

   中近距離攻撃

  ハンドショットガン

   近距離範囲攻撃

  チャージライフル

   遠距離超ダメージ攻撃


 偏光グラス型スカウターと連動したオート照準機能有。例外としてストラクチャーユニットの処理速度を超える速さのある敵に対しては、マニュアル照準機能が適用される。


イメージイラスト きゃらふと様より

花菱 草香

(ハナビシ ソウカ)


クラフトル管理局本部 ナンバー2のクラフターストライカー


●17歳


●誕生日 8月7日 獅子座


●血液型 AB型


●趣味 買い物 オークション


●性格 自分より強いやつと戦いたがる。頭が切れる。世話好き。



クラフトル管理局の誇る精鋭、クラフターストライカーのナンバー2。

強くなりたいがゆえに努力し、ここまでのぼりつめた。


草香は、メテオインパクト時に、隕石落下地点付近の海上の船の上にいた。

そんな絶望の中、一人の男の姿を見た。その男は、飛散しているクラフトルを集め、落下する隕石を破壊。だが、隕石は全て破壊されてはいなかった。

「俺は、やれることをやる! 君たちにも、やれることがあるはずだ!」

その声は希望の光となり、草香の力は覚醒。そして、覚醒した黄金に輝く力で衝撃波から船を救う。

それ以来、その男の行方はつかめないが、草香は彼のように強くなることを目標にして頑張っている。



●第一形態 「金色の天使

 稲妻のやりを両手に持ち戦う。

 攻撃属性は雷。

イオンスラスター」を発動して高速移動が可能。

 必殺技【スピアーラッシュ


●第二形態 「黄金の守護神

 黄金に光る盾で「神々の守護」を発動できる。

 体力がある限り絶対防御が可能。


イメージイラスト きゃらふと様より

守本 巧人

(モリモト タクト)


クラフトル管理局員


●年齢 誕生日

(※記憶喪失により不明)

●血液型 A型

●性格 真面目だが、楽をする癖がある。自分の判断力には自信がある。

●好きな言葉 適材適所



平行世界で起きたメテオインパクトの生き残り。その際、過去の記憶を失ってしまう。

クラフトル数値は微量だが、クラフトルの位置と能力数値を見る特殊能力がある。その能力を買われ、クラフトル管理局員として働いている。


ある日、通常任務でクラフトル反応を探していたところ、巨大暴走フラフトルに遭遇。その攻撃に巻き込まれた巧人は、平行世界からこちらの世界へと飛ばされる。

クロ


秋風紅葉専用のストラクチャーユニット


普段は猫の姿をしている対話型ロボット。

クラフターストライカー変身時のイメージ安定化と強化の機能を備えている。

通常、クラフト能力を発動できない紅葉のための大事なサポート役である。


●機能

1 猫機能(猫のように振る舞う機能)

2 対話モード(話し相手になる機能)

3 演算モード(簡単な演算をするための機能)

4 クラフターストライカーの補助機能

 「ストライカーシステム」(上記)

●ルリチル


竜胆菖蒲専用のストラクチャーユニット


性能はクロと同じ。

羽があるので空を飛ぶことが可能。

偵察などに使える。


イメージイラスト きゃらふと様より

コン


神楽月譲葉専用のストラクチャーユニット


性能は標準だが、一部の補正演算機能が特化されている。


イメージイラスト イラストレイン様より

クーガー

花菱草香専用のストラクチャーユニット


模擬戦用に生成されたため、同期能力しかもたない。

草香のパシリ、マスコット的存在。


イメージイラスト いらすとや様より(加工)

近藤圭一

(コンドウケイイチ)


クラフトル管理局 局長

 守本巧人の上司


●52歳


●性格 ナイスガイなおじ様。上下関係にうるさい。元警部だったため、物事を疑ってかかる癖がある。口うるさいが、部下思いである。

夢野小寿恵

(ユメノコズエ)


クラフトル管理局 解析班 班長


●26歳独身


●一度、物事に興味を持つと、とことん執着し、追求する。やさしく、面倒見がいい。


管理局で、クラフトルの研究をしている。

メテオインパクト後、記憶をなくして海岸に漂着した巧人を見つけ、保護する。

その後、巧人の特殊能力(クラフトル数値を視認する能力)を目にして、関心を寄せるとともに、彼を管理局へと勧誘した。


巧人の能力を解析して、クラフトル数値を解析する機能を持ったユニットを開発する。

今は、マイナス数値である暴走クラフトルの能力数値を解析するためのユニットを開発中。

巧人は、暴走クラフトルマイナス数値の反応を確認することはできるのだが、その数値まではわからない)

サード


人型暴走クラフトル


詳細不明


イメージイラスト きゃらふと様より

セカンド


人型暴走クラフトル


詳細不明


イメージイラスト きゃらふと様より

九条修造 

(クジョウ シュウゾウ)


●最新VRシステムのゲーム会社の親会社のCEO

赤四手 胡桃

(アカシデ クルミ)

愛称 クルミン


●小学6年生


●11歳


●誕生日 9月30日 天秤座


●血液型 A型


●性格 姉思い。寂しがりや。お調子者でわがまま。


ダーククラフトルで作られた世界で消息不明の姉を探している少女。

女神の町巧人と出会い、姉を探すため行動を共にすることになった。

具現化できるレベルのクラフター能力を持っている。

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