第十話 氷の魔法
文字数 1,459文字
ウーハーボックスの群れは音を出すたび風を起こし、砂ぼこりが舞う始末だ。
その声は、ストラクチャーユニットのものだった。
この辺り一帯を埋め尽くす音声が邪魔でしたら、あなた専用のユニークスキル、イコライザーベルでかき消す事ができます。
好みの調整をして、「イコライジング」と叫んでください。
すると、少女の目の前に、緑色のフラフィックイコライザーのバーが無数に並んだ。
バーは、周囲の音に反応して波打つように上下に動いている。
少女は、そのバーの横に表示された0の数値の横のラインをなぞるように、ベルを振り抜き、呪文を唱えた。
無音……小さな音も、大きな音も……音という音は、全てかき消されたのだった。
これも、ストラクチャーユニットの能力である。
音声通話が、現在利用不可能なため、視界インターフェースに切り替えたのだ。
(※ただしユニット側は、少女の声をクラフトルの力で解読可能である)
右手にあるステッキを利用します。
あなたの攻撃属性は、氷結系となっております。
ステッキを振りかざし、「フリージング」と叫んでください
』
それらは、飛び跳ねるウーハーボックス型の爆音暴走クラフトルたちに絡みつき、一瞬で凍らせ、動きを止めた。
すると、うごめいていた黒い体は一瞬で凍り付き、動きを止め、音を出すのをやめた。
氷の塊を攻撃対象にぶつけてコアを露出させます。
あとはコアを凍らせて同じ要領で破壊できます。
ステッキを振りかざし、「アイスクリスタル」と叫んでください。
氷の塊を目標に向けて射出します。
』
少女の勘は当たっていた。
凍結が浅かったのだろうか……凍り付いた爆音暴走クラフトルは小刻みに振動し、凍り付いた表面のメガホンを、自力で削ぎ落とす。
その後、一瞬だけ赤く光るコアが見えたが、すぐに黒いスライム状の物体を再生し、刀のような刃をハリネズミのように無数に突き出だして少女めがけて転がり始めるのだった。