第四十五話 龍の正体
文字数 3,214文字
それは、凶悪な姿ではあったが、タクトにはほど遠く、どこか慌ただしい様子が伺えた。
【ファフニールLV99】
お前たち、ここへ何しに来た!
ここはお前たちゴミの来るところではない。
…………まさか、わたしを倒しにきた……などと愚かなことを言うのではあるまいな。
そんな愚かなゴミならば、消し炭にしてくれようぞ。
それとだ。
立札の文字は読んだか!
そこには、調整中と書いてあったはずだ。
さらに、その通路は先へ進めないはずだったのだ。
お前たち、どうやって先へ進んだ!
返答次第では、女神の町へ強制転送だ。
すると、銃弾がドラゴンに当たったとたんに龍は砕け散った。
ただ、ドームの中央に食べかけの巨大なマンガ肉が置かれているだけだった。
一方、巨大なマンガ肉の側まできた巧人は、その肉の裏側に回り込む。
そこで、隠れている人間を発見するのだった。
で、あなたたちの方こそ、どうやってここへ来たんですか?
どう見てもあなたたちはプレイヤーですよね。
あの壁を通る権限はないはずですけど……。
隠れていた男の顔を見た譲葉は、何かを思い出した。
本当は、さっきのドラゴンがここのボスだ。
あれはわたしの権限で映像だけを呼び起こしたただのハリボテだ。
それを、銃で一撃だなんて……。
それより、この肉だ!
この肉の中からドラゴンのプログラムコアが見つかったんだ。
どう考えもドラゴンが肉に変化したようにしか見えない。
しかも、食べられない肉ときている!
そうすることによって、ゲームとしてこの世界が成り立ち、プレイヤーたちを楽しませることができる。
僕は一介のプログラマーに過ぎないんだ。
ただ、新しいVRMMOの調整の仕事と聞いて、2か月の契約でこのゲームの世界の中に入ったんだ。
主に、このエリアの調整とバグの発見が僕の仕事だ。
こないだだって、屍の魔女が異常な死に方をするものだから、調整に手間取ったんだ。
原因がわからなかったから、余計に時間がかかった……。
秀星さん! 聞いてください!
これはゲームであってゲームではありません。
関係ない人々の日常を奪っているんですよ。
それに、この子のお姉さんがここへ来て行方不明になったり……いいえ、ここのドラゴンを討伐にきた人も行方不明になっているんですよ。
ゲームにしては、少し物騒な気がします。
一条は祭壇に近づくと、腕を前に出してUIの操作を行っていた。
ちょっとソースを調べてみる。
…………。
ああ、あった。
これは……。
わざと重なるように記述してある。
実際の座標はZ215だ!
誰がこんなことを……。
Zは高さの数値だから……かなり上空に転送位置がきている!
これは修正しなくては……!
祭壇には魔法陣が刻まれていた。
かすかな光を発し、今か今かと呪文の発動を待っているかのようだった。
巧人たちはその光に飲み込まれ、転送を開始した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
光が収束する。
目が暗闇に慣れてくると異様な光景が巧人たちの眼前に広がった。
そこは、闇のエリアだった。
その光はまるで道を示しているかのようだった。