第五十三話 黒龍の一撃
文字数 2,459文字
散っていった人型ダーククラフトルたちが放出したクラフトル粒子を吸収しながら、ゆっくりと下降してくる。
危険を感じた巧人は、胡桃と栗朱、胡桃が生成した大量のぬいぐるみたちに繭の中の人間を救助するよう伝え、紅葉たちと合流した。
紅葉たちと合流した巧人は、頭上を見上げ、黒龍タクトの姿を確認する。
…………。
そうか!
草香なら、クラフターストライカーに変身しなくても能力を発動できる。
そういうことだったのか!
絶対防御で吸収されないようにしていたんだな。
けれど、それでも脱出できないということは、絶対防御の力さえも吸い取っているということなのか……。
紅葉は、息切れ状態だった。
それに気付いた巧人は、紅葉のクラフトル数値を確認する。
すると、まさかの事態が発生していた。
紅葉のクラフトル数値が1000近くまで減っていたのだ!
(いや……まさか……数値は訓練すればある程度は上がっていく。そして、滅多なことでは下がらない。考えられるのは、俺と同じ貯蔵型……いや、それだと今まで数値が減らなかった理由にはならない)
(じゃあ、体力がなくなって内在したクラフトル粒子を放出したとでもいうのか……!? もしそうなら、俺たちと同じ貯蔵型の性質も持っている!?)
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──解説──
【内在型のクラフターストライカー】
攻撃時にクラフトル粒子量の変化はないが、そのかわり体力を消費することになる。
攻撃力は、自分のクラフトル数値と必殺技の倍率。
※紅葉の力が12000だとして、グングニルスティンガーが倍率12だとすれば、攻撃力は144000となる。これだと、-150000であるファーストを倒し切ることはできない。
じゃあ、その穴埋めをしたものは何なのか……。
【貯蔵型のクラフターストライカー】
貯蔵型の場合、濃縮したクラフトル粒子を体に溜め込み、直接攻撃として放出する。
攻撃力は一度の放出量と同じ値になる。
つまり、タクトが-300000クラフトル以下の状態であれば、巧人の300000クラフトルで安全に一撃で倒せたのだ。
※ファーストを一度で倒すには威力が足りないと思った紅葉が、何らかの影響で内在するクラフトルを貯蔵型に変換し、ギリギリまで使用したのなら、この穴埋めは可能である。
144000+11000で155000ほどの威力だろう。
なので、もしファーストがもう一度-150000で復活していたら……。
紅葉が二度目の攻撃を放った場合、攻撃力はクラフトルブースターを使用しても
(1000x12+1000)x10=130000
20000足りないので倒し切れないことになるのだ。
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その瞬間、辺りに爆風のような風が吹き荒れる。
全ては予定通りに進んだ。
世界を浄化し、安定へと導く準備ができた。
妄想は想像を上回る創造物を作り上げる。
これほど素晴らしい奇跡はない!
そして、良質のクラフトルの生成、感謝するぞ。
光のクラフトルの使者よ!
ただ、人間は、地球の管理者であればよかったのだ。
それを、全てを手に入れたかのような振る舞いで地球を食いつぶしている。
傲慢になりすぎたのだよ。
それを叱り飛ばす存在が必要だとはおもわないか。
これから先、人間は愚かな道を進む。
それを変えるためにわたしが存在する。
わたしは人間を導くもの……。
だが、紅葉の初動が遅れた。
紅葉の息切れを気にしていた巧人は、その遅れに気づき、助けに入ろうとする。
(しまった! 体をコーティングしていなかった!)
そして、紅葉を抱えたまま地面へと落下する。