第五十八話 願いの力
文字数 1,952文字
この動けない閉鎖空間で、少しでも、その恐怖にのまれれば、自分を保っていられない。
それを本能的に感じ取っていた。
だが、彼女たちも人間である。
そんな強がりがいつまでも持つはずがない。
ゆっくり流れる時間は彼女たちを発狂寸前に追い込んでいった。
そんな窮地の最中、少女たちに声が聞こえてきた。
もっと本質的なこと!
あなたたちはこのままだと死んでしまう!
死ぬの!
死にたくないでしょ!
なら、願いは何!
けれど、まだ力の本質を理解していない!
クラフトル能力は、想像を創造する力。
でも、もっと本質的なこと。
それは、願いを叶える力!
だから、そんな願いをクラフトルに託すの!
ストラクチャーユニットが使えなくたって、強く思えば、クラフトルは答えてくれる!
──だから、信じて!────
────そして、願って!──
平和を守る、ダークタクトを倒す、そんな大それたことじゃなく、もっと身近な、自分の思いを願った。
──死にたくない──
それは、何よりも強い願い。本能的な願いだった。
その単純明快な強い願いは、ダーククラフトルドーム内に無数に散らばるクラフトル粒子に反応し、奇跡を起こした。
少女たちの周りに、光り輝くクラフトル粒子が集まってくる。
そして、それらは収束し、黄金の輝きを放ち、ダーククラフトルの壁を破壊した。
その後、黄金の光は少女たちの三角形に繋いでフラクタルな図形を描き、クラフトル粒子を形どっていく。
さらには、少女たちの中央に位置したダークタクトを囲むように、三角錐のクラフトルフィールドを形成した。
クラフトル粒子はダークタクトへ攻撃を開始する。
その二つの絶妙なバランスにより、その体と人格を維持しているのだ。
だが、神の守護は、クラフトル粒子をただ放出するだけで、何の効果も示さなかった。
クラフトルフィールドは、容赦なくダークタクトのクラフトル粒子を吸い上げていく。
ドラゴンの形、モンスターの形、戦車の形、戦闘機の形、そして、数々の異形の姿に次々と変化を繰り返す。
そして最後には、形作るのをやめてスライム状に溶けてしまった。
その場に残ったのは、ダークタクトの残りカスが集まってできた巨大なスライム状の暴走クラフトルだった。