第五十六話 ダークタクト
文字数 2,388文字
人型ダーククラフトルへと変貌したタクトは、己の力に酔いしれていた。
周囲のダーククラフトル粒子を吸収し、なおも力を蓄え続けている。
巧人は、マイナスクラフトル数値を確認する。
伝説的な力をもったものへのあこがれのイメージ。
それがそのまま具現化してもおかしくはない。
だが、たとえ姿形がそれに似ていたとしても、その能力はまた別の話だ。
最強のイメージは、一つではないのだから。
戦力でいえば、圧倒的にこちらが不利。
だが、彼女たちにとってはそんなことはお構いなしだ。
若さがそうさせているのだろうか……と、巧人は感心する。
だが、だからこそ、そんな彼女たちを守らなければならない。そう思うのであった。
周囲は、ダーククラフトルが霧のように充満し、不気味な雰囲気が漂っていた。
そして、その重さに耐えきれず、そのまま地に伏してしまう。
立つことは困難。生身の体であれば、そのまま潰されてしまっていただろう。
その傍らで草香が静かに眠っている。
その寝顔は、まるで無邪気な子供のようだった。
その糸は巧人の胸から体の中に侵入する。
いきなりかよっ!
(せめて、心の準備ぐらい……)