第二十八話 崩壊
文字数 1,803文字
巧人と草香は、九条の後に続き、上の階へ上る。
そして、また下のフロアと同じようなフロアにたどり着く。
その後、九条は、フロアのスクリーンを下ろし、二人に映像を見せた。
高みを維持することは、大変なのです。
たかだか100年も生きられない人間にとっては……。
人間の領分をわきまえずに高みに上ろうとすれば、罰を受けるのです。
これから人間という種が存続したいのなら、そうならないように調整が必要なのです。
すると、スクリーンに映し出された画面は、地震のように揺れ始め、やがて崩れ始める。
滅びが、加速していく……。
ダーククラフトルで作られた繭は、突然輝きだす。
そして、光の放出が終わると、繭はふたが開くように二つに割れる。
だが、不自然なことに、そこにいるはずの人間の姿はなかった。
そうですね、今は、偏っています。
ですから、もっと規模を大きくしていくわけです。
この、ダーククラフトルを使えばたやすいこと。
そして、人類を選定し、英知を築き、基準まで至らなかった人々の水準を引き上げ、さらには、滅びのない世界を創るのです。
もし、脳内物質に踊らされてそれを逸脱するような人間がいたならば、我々が開発したこのゲームの中で、崩壊と再生を楽しべばよいのですよ。
素晴らしい考えだとは思いませんか?
前にも言いましたが、人類は100年も生きられない単なる生き物にすぎないのです。
100年経って理を知っても遅いのですよ。
せめて、もっと早く知っておかなければならないのです。
そして、確実に伝えていかなければならないのです。
ダーククラフトルは、それを可能にします。
我々は、そうしなければならない。
なぜなら、滅びる未来が見えているからなのです。
それは、あの方が教えてくれました。
おっと、忘れていました。
最上階で、あの方がお待ちしております。
あの方のすぐ側に、ファースト様が寝ていますが、起こさないようにしてください。
今は、眠っておりますので……。
無理に起こすと大変なことになります。
では、こちらへどうぞ。
巧人と草香は、九条に案内され、ゴールドがちりばめられた、高級感のあるエレベーターに乗りこんだ。
エレベーターは最上階へと向かう。
扉の先は暗く、異様な空気が漂っている。
そして、その先で見たものは……。