第五十九話 超巨大暴走クラフトル
文字数 2,448文字
その重みのせいなのか、暴走クラフトルが動くたびに床が揺れ始める。
少女たちは、さっきの攻撃で力を使い果たし、変身を強制解除されてしまった。
激しい揺れの中を走り抜ける少女たち。
だが、突然地面が崩落する。
菖蒲と譲葉はその難を逃れたが、紅葉は崩落した地面のせいで先へ進むことができなくなってしまった。
後ろから暴走クラフトルの脅威が迫る。
前は崩落した地面。足を踏み外せば200メートル上空から地上へ落下。
もう後がない。
そして、そのまま引力に吸い寄せられるように、加速していった。
紅葉の覚悟を見届けた菖蒲と譲葉は、目に溜まる涙をこらえながらその場を立ち去った。
巧人の姿を見て安心したのか、二人の目から悔し涙があふれ出る。
この高さから落ちれば奇跡でも起こらない限り、助からない。
それでも、二人はまだ紅葉の生存の可能性を信じていた。
もう一度、黄金の奇跡があることを祈って……。
その光は超巨大暴走クラフトルの体をえぐるように浄化していく。
そして、浄化したクラフトルを左腕で吸収し、また破壊の力へと変換する。
今のところ、膨張しようとするだけで、何の力も備わっていないようだ。
巧人の攻撃は、その膨張速度を上回り、超巨大な黒い物体を収縮させていく。
浄化したクラフトルは全て巧人の左腕に吸い込まれる。
だが、浄化速度が落ちたため、超巨大暴走クラフトルが再度膨張を始めてしまった。
浄化を強めれば、あふれたクラフトルを吸収され、弱めれば大きくなる。
今までとは別の意味で厄介な存在である。
超巨大暴走クラフトルの体は、またクラフトルを吸収しながら収縮を始める。
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巨大な黒い塊を直径5メートルほどのコアの大きさまでもっていくのにかなりの時間を要した。
最後は、コアを破壊するだけ…………のはずだった。
だが、巧人はそれを黙って見過ごすわけにはいかなかった。
やつの存在が草香を苦しめ、そして紅葉を葬ったのだ。
そして……必殺の一撃を放つ。