第四十三話 リベンジ
文字数 4,652文字
橋の破壊という想定外の出来事と遭遇したが、菖蒲のオーバーフリージングのおかげで、思い出のオルゴールを入手することができた。彼女がいなければ、こう簡単にはいかなかっただろう。
今回の功労者の菖蒲は、巧人に背負われてスヤスヤと眠るのだった。
菖蒲の疲労を心配した巧人パーティーは、一度、森林地帯を抜けて女神の町へと向かうこととなった。
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帰路の途中、菖蒲を背負っている巧人に胡桃が声をかける。
その後、巧人たちは森林地帯を抜けて女神の町へとたどり着く。
その日は宿泊先の宿屋に戻り、菖蒲を部屋のベッドに寝かせて回復を待つことになった。
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そして、翌日。
菖蒲の体力は回復。屍の魔女討伐の準備は完了した。
リベンジマッチである。
巧人たちは、気合十分で魔女討伐に挑むのだった。
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──屍の町──
相変わらず暗く、異様な雰囲気が漂ってくる場所だ。
もうすぐ、敵の出現するエリアに入る。
すると、モンスターたちが周囲の地面から湧いて出てきた。
踊るように銃を乱射。それでも、その銃弾は確実にターゲットにヒットし、軽やかに敵を殲滅していった。
譲葉が余計な雑魚を掃討した後、菖蒲が動く。
墓地一面が凍ったと同時に屍の魔女の動きを封じる。
だが、謎の赤い光がその場に纏わりつき、瞬時に屍の魔女を復活させた。
さらに、復活した屍の魔女の頭の上に、謎のメッセージが浮かび上がる。
────座標確認────
────ダメージ確認────
────エラー回復完了────
不自然に動きを止められ、その上かなりの体力を持つはずのボスが一撃で倒されることは数値上ありません。なので、それに気付いた運営的立場のような人たちがエラーと判断したのだと思うのです。
それで、こういった事象が起こった場合に復活する処理をしたのだと思います。
わたしが今相手にしている雑魚モンスターは、一撃で倒せる敵もいますので、適用されていないみたいですけどね。
普通に戦って普通に倒せばいいだけの話ですよ。
それに、わたしたちは、余裕で倒せるレベルに達していますからね。
ここも雑魚の数が減ってきたし、敵の動きのパターンをつかんだので変身を解こうと思います。
クラフトアウト!
雑魚モンスターたちを一撃も食らわずになぎ倒し始める。
完全に敵の動きのパターンをつかんだようだ。
それを確認した紅葉は、光を帯びた剣をそのまま屍の魔女に向けて振り抜いた。
光は、真空波のように飛んで屍の魔女に命中する。
その攻撃を受けた屍の魔女は一時的に動きを止めた。
だが、すぐにまた動き出す。
わかった! いくよっ!
スラッシュウエーブ!(LV1)……(クールタイム)……スラッシュウエーブ!(LV1)……(クールタイム)……スラッシュウエーブ!(LV1)……(クールタイム)……スラッシュウエーブ!(LV1)…………
でも……まだいけるっ!
だが、こちらのHPはまだ十分残っている。
いいえ、その攻撃は無駄じゃなかったです。
今のでだいたいわかりました。
屍の魔女に攻撃をすると、ほぼ攻撃者を正面に捉えて攻撃を左右にかわします。
その時であれば、真横からの攻撃で当てることができそうです。
この戦法を、十字砲火としましょう。
ちなみに、最初の一撃が当たったのは、ちょうど斜めの位置からの攻撃だったので、運が良かったのだと思います。
だが、そのかわした方向には、菖蒲のスキルが待ち構えていた。
業火の刃が屍の魔女に向かって飛んで行く。
その業火の刃は、見事に屍の魔女に命中する。
パターンにハマってしまえばこっちのものだ。
確実に屍の魔女の体力を削っている。
しばらくして、屍の魔女は杖を両手で持ち、ポイズンミストの体勢にはいる。
紅葉と菖蒲は毒をまともに食らう。
だが…………怯まずに、屍の魔女に切りかかる!
さらに、コンボ攻撃が発生し、クリティカルヒットを呼び起こす!
その攻撃は、屍の魔女の体力をいとも簡単に削り切るのだった。
【屍の魔女LV70】
ぐあああああああああああああ!
胡桃は【思い出のオルゴール】を使った。
心にしみる心地よい音が、周囲に広がる。
その直後、倒した屍の魔女は美しい輝きを放って一人の人影を映し出した。
それは、一人の少女の姿だった。
わたしは、邪龍の使い魔として町の人々に火あぶりの刑にされた少女です。
業火の中、わたしは悔しさのあまり、町の人々を呪いました。
すると、わたしの呪いの狂気を感じ取った魔物がやってきて、わたしを取り込み、この地へ降臨したのです。それが、屍の魔女でした。
魔女は言いました。わたしの願いを叶え、町の人々を滅ぼすと。
ですが、それは一時の感情で、本当にそんなことをわたしは望んではいませんでした。
それでも魔女は、わたしの呪いを理由にこの地にくる人々を屍にしてきました。
こんなものを呼びよせてしまったわたしは、当然地獄へ落ちるでしょう。
わたしは、そんな死にゆく人々を見て、苦しみ続けました。
でも、これでようやく解放されます。倒してくれて本当にありがとう。
魂を解放してくれたお礼に、龍のいる地へのゲートを解放しましょう。
わたしにできることは、道案内だけです。
ご武運をお祈りします。
薄暗かった墓地は、やがて明るくなり、怪しい気配も消える。
どうやら、ここのイベントは終了したようだ。
すると、そこに光の柱の立つ魔法陣が出現していた。
巧人たちは、勝利の余韻に浸ることなく、魔法陣へと足を踏み入れた。
余韻に浸る暇などはこれっぽっちもない。草香の救助、それと、胡桃の姉を見つけるという目的があるからだ。
ゲームを楽しんでいるわけではないのだ。
パーティー全員が魔法陣へ入ると、光の柱は輝きを増し始める。
その光は、巧人たちを龍の元へと転送するのだった。
はたして、ラスボスの龍とは、草香を取り込んだタクトのことなのだろうか……。