第五十四話 伝説の存在
文字数 2,103文字
少女たちが巧人に気を取られているうちに黒龍タクトは上昇して反転。
そして、もう一度巧人めがけて急降下する。
つららの尖った先端が黒龍タクトに向かって伸びる。
左の羽の先端ばかりを、一発一発丁寧に打ち込んでいく。
さすがに効いているのか、黒龍タクトはバランスを崩し、地面に着地する。
その後、急上昇して離脱した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
二人は、黒龍タクトの攻撃をギリギリでかわしながら、少しづつダメージを与えていた。
菖蒲はフリージングでつららを形成し黒龍タクトの進路を妨害。
譲葉は隙をついて、特定箇所への攻撃を続ける。
この繰り返しだ。
だが、さすがに同じことを繰り返していればパターンを覚えられてしまう。
黒龍タクトは、上空へ高く飛んで静止する。
その後、黒い雲のようなダーククラフトルを口元に集め始める。それらは口元で収束し、赤い光を放ち始めた。
ナパームフレア!
そして、黒い地面に着弾する。
その瞬間、爆発したように炎がドーム状に広がり、周囲を飲み込んでいった。
危険を感じた菖蒲は、譲葉の前に出る。
斜めに氷を張り、迫りくる炎の方向を上向きにする。
かろうじて炎を遮断することに成功した。
そして、すぐさまチャージライフルのチャージを開始した。
もちろん、考えなしにチャージを開始したわけではない。黒龍タクトが、すでに2撃目を撃つ体勢に入っていたのを確認しての行動だ。
黒龍タクトは、攻撃後、すぐにダーククラフトルを集めていたのだ。
レーザーは、赤い光を照射する。
もちろん譲葉の射撃は、この程度の目標なら外さない。
レーザーは、赤い光を打ち抜き、それを浄化した。
そして、五芒星の魔法陣らしきものを出現させ、五つの赤い光を発生させた。
力が収束していく。
ゆっくりと体を起こし、体の痛みを認識して生きていることを確認する。
負傷していては、黒龍タクトと渡り合うには厳しい。
そう、巧人は感じていた。
だが、一つの希望を紅葉に見出していた。
確信はない。けれども、それに賭けるしかなかった。
これがもし成功すれば、おそらく、紅葉は黒龍タクトを凌駕する存在になる。
────それは、伝説の存在────