第118話 秋

文字数 306文字

民度がそこまでのレベルにないからといって、
政府首班を直接選挙で選ばせない。
その同じ口から、改憲の住民投票を実施する案が出ている。
個人カードもワクチンも、そのための準備だったわけだ。
準備が整い、成算があるのだろう。

十三年前に、原子力事故が起きて、混乱を引き摺りながら、あっという間に時が過ぎた。
気付けば、こんな事になっていた。

西暦二千十年の夏は、異常に暑かった。
その永い夏が過ぎて、
その年の東北の秋は、最高の秋だった。
旨い刺身で呑んだ、地酒の味を 忘れない。
晴れ渡る空の下、一面に稔った稲穂の輝きを 忘れない。
平穏な街を吹いていく、風の匂いを 忘れない。
そしてまもなく、冬が来た

私にはあれが
此の國の 最後の秋だった
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