第5話 天国の門
文字数 499文字
教会の絵にたどり着いたネロは、パトラッシュを連れていた。
ユディシュティラ王子が天国の門へ上れたのは、最後まで愛犬を棄てなかったからだった。
もう二十年ほど前のことであるが、動物愛護センターで生後三ヶ月の雌の柴犬を貰ってきた。その時センターの係の女性は、最後まで飼ってくださいねと言った。
なるほど家に連れ帰って分かったのだが、犬は夜中も吠え立てて、繋いだ紐を何度も引きちぎって家から逃げ出した。その犬はそのたびに近所の人に保護されて、我が家に連れ戻されてきたが、犬に対する愛着はそのたびに冷めていった。そのうち隣の家からうるさいと怒鳴られたりしたので、引っ越しも何度かした。
見た目はそれなりに可愛い犬だったが、隙を見て逃げ出すような犬に愛着は湧かなかった。しかし愛護センターとの約束があったので、犬はそのまま飼い続けた。その雌犬はその後仔犬を全部で十二匹産んだ。子犬は一匹を残して、皆人にやってしまった。一匹だけ手元に残した子犬も数年前に親の後を追って死んだ。犬のことで大変な苦労を経験したが、愛護センターとの約束は結局守った。ネットなどで柴犬の写真を見ると、今もその犬のことを思い出す。
ユディシュティラ王子が天国の門へ上れたのは、最後まで愛犬を棄てなかったからだった。
もう二十年ほど前のことであるが、動物愛護センターで生後三ヶ月の雌の柴犬を貰ってきた。その時センターの係の女性は、最後まで飼ってくださいねと言った。
なるほど家に連れ帰って分かったのだが、犬は夜中も吠え立てて、繋いだ紐を何度も引きちぎって家から逃げ出した。その犬はそのたびに近所の人に保護されて、我が家に連れ戻されてきたが、犬に対する愛着はそのたびに冷めていった。そのうち隣の家からうるさいと怒鳴られたりしたので、引っ越しも何度かした。
見た目はそれなりに可愛い犬だったが、隙を見て逃げ出すような犬に愛着は湧かなかった。しかし愛護センターとの約束があったので、犬はそのまま飼い続けた。その雌犬はその後仔犬を全部で十二匹産んだ。子犬は一匹を残して、皆人にやってしまった。一匹だけ手元に残した子犬も数年前に親の後を追って死んだ。犬のことで大変な苦労を経験したが、愛護センターとの約束は結局守った。ネットなどで柴犬の写真を見ると、今もその犬のことを思い出す。