第45話 神の居ない辺土

文字数 437文字

 昔、剣道の練習のはじめと終わりには、全員が一列に並んで、神前に礼をした。
 たとえ誰も見ていなくても、誰からも文句は言われなくても、
 神前に恥じる行為はしない事を全員がそこで誓った。
 だからときに危険な、集団の鍛錬が成り立った。

 特捜が働かない。
 トップに受験テクニックだけには長けたオバサンを据えて、安穏としている。
 検事として働いていれば、クラス会やパーティーに出席しても大威張りで、もうそれで十分だろ、ということだ。
 いい年して青臭い正義感でリスクを取って、見知らぬ他人のために働いて、折角の地位を棒に振るような愚かな真似はしないということだ。オバサンが考えているのは、子供や孫の進学のことだ。家族一族の繁栄、安泰の事だけだ。
 神前に恥じない、などという精神は、初めから持ってはいない。

 今後はいろいろな所で、そういう操り人形がトップに据えられていく。
 昔からこの辺りでは、世の中が危機で、トップを決めづらい時には、一時的に女を立てて、誤魔化し、やり過ごす伝統がある。
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