第１２５話　城

國を守るには、何が一番重要だろうか。

そこで、人だ、と即答する者は、どれほどいるだろう。
人というのは、優秀な兵や司令官の事ではない。
民間人、と言われるものを含めた住民の事だ。
最新兵器や核の前で、女子供がなんの役に立つのかとか、
住民を盾にして戦うというのかとか、そういう事では勿論無い。

外国からは常に国力を弱体化させようとする圧力が架かる。
それに対して政府がきちんと対応しなければならないわけだが、
そこのハンドル捌きが稚拙で、後ろにお客様を乗せているという意識が無い。
ハンドルを握っているのは自分が優秀だからで、
後ろには荷物を積んでいるだけという感覚である。
自分の運転技術には酔いながら、隣の彼女のことくらいしか考えていない。
特に最近の運転は滅茶苦茶なことになっている。

官僚として優秀であるということは、例え相手が同盟軍の将官であろうと、外国の国益の為に働く人間と仲良く行動してみせることではなかろう。自国を弱体化させて、なんの官僚、政治家であるか。

人は城。その意味を二百字にまとめなさい。
そう言われれば、それなりに立派な答案を書いてみせるのだろう。
然しその知識が、本当の仕事に活かされないことを、哀しむ。