第13話:マルセイユで就職とビザ取得へ

文字数 1,235文字

 ホテルでマルセイユで有名な日本人はいるかと聞くとミスター・カサドを紹介してくれて住んでる場所も教えてくれたのでその店を訪ねる事にした。笠戸喜八の小さな店を見つけ、自己紹介してから、ゆっくり話を聞かせて欲しいと安田亀吉が言うと今晩、夜7時に来店してくれと言われ、了解した。その晩、笠戸喜八さんと安田亀吉、衣子、勝一、勝二の5人で、近くのレストランで食事をして、安田亀吉が橫浜で亀屋という生糸問屋で働いていた事や船を買って大きな商売をしたことなど話すと驚いていた。

 次に笠戸喜八が話し出し、若くして日本を出て、欧州を目指した笠戸喜八は、エジプトのアレクサンドリア港に着いた。そこで寄港船舶の船員や船客に無賃持込商品・パコチレを販売して商売の腕を磨いた。その後ロンドンに赴いて海上貨物相場売買の国際取引に身を投じた。少しの財を得た笠戸氏は、他の地に赴き機会を待つ決心をした。次に行ったのが欧州到着時に通過した東洋との玄関口マルセイユだった。ここが国際取引に挑戦するには最適な場所に感じた。

 世界第一次大戦の初期、1914年に、この地に腰を落ち着け、1917年8月18日、マルセイユで私の母方の従姉妹マリー=ローズ・ルミュザ嬢と結婚した。笠戸喜八が、もし良かったら安田亀吉、勝一、勝二に笠戸商事の従業員として雇い入れるという名目でフランスのビザを取った方が良いと提案してくれ。一緒に商売をしようと言った。安田亀吉にとっては思ってもみない機会だと喜んだ。

 その後、笠戸商店で安田と笠戸さんがマルセイユに来る日本人旅行者に日本の着物、織物、陶器を持参してもらい、ここで売る事を考えた。その後、安田亀吉が友人の日本にいる三井物産の本居康智に手紙を書き1919年夏に三井物産・パリ支店への訪問の手はずを取ってもらった。マルセイユで貿易業がしたいので協力を願い入れると、できるだけの協力を約束してくれた。そしてパリ支店の方にスイス銀行に同行してもらいプライベートバンクを紹介してもらった。

 その後、安田亀吉の持参した日本円で50万円のうち3万円を38万フランに替えてもらい残りの47万円で346kgの金を購入して預け電話で連絡を取り合う様になった。マルセイユに戻って三井物産の本居康智さんに手紙で連絡を取って日本で特に有名な織物・桐生織、西陣織、博多織、羽二重、秩父銘仙、足利銘仙、結城紬、黄八丈、陶磁器・萩焼、有田焼、伊万里焼、備前焼、信楽焼、九谷焼などを買い取るので船便で送って欲しいと書いた。

 そして購入できた数量と見積もりをもらい三井物産パリ支店に見積金額を送金する手続きを取った。実際の商売は三井物産にマージンを払ってフランス、イタリアの貴族、元貴族、議員や富裕層を紹介してもらい三井物産の担当者と連携を取りながら顧客との人間関係を構築していく方法で接待、交際費をかけて営業をしていくので安田勝一と勝二は毎日、忙しく、フランス、スイス、イタリアを回って商売を拡大させていった。
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