第11話:欧州航路で1ケ月の船旅3

文字数 1,399文字

「そして船は、シンガポール・昭南島をめざして美しい香港島を出発した」
「夜涼しくなった頃、船のデッキを散歩している時、急に船員が大きな声で叫んでいるのが聞こえ船首の方へ向かった」
「すると黒い色したイルカが群れをなして船の横の海を全速力で泳いでいた」
「その姿は、まるで船と競争しているように見えて観客は歓声をあげた」
「更に、多くのイルカが船の回りを群れをなして泳ぎ続けるのを見て拍手が起きた」
「その拍手の音にイルカが船に驚き逃げていった」
「数十匹、百匹と、すごい大群に思わず船から感嘆の声があがった」

「夜になり科学者のY博士から北斗七星、北極星について説明を受けた」
「北極星は、今いる位置を知るのに非情に便利だと言われた」
「更に、これらの星座は赤道で地平線に北極では真上に見えてるが、赤道から南下すれば見えなくなる事などを教えてもらった」

 11月下旬でも暑い位の気温であり夏に洋行するのは、さぞかし暑苦しくて大変だろうと想像ができた。船の旅は退屈で、まだ2週間も経ってないのに1ケ月以上も経った様に感じた。

 その6日後の午後、
「退屈しきった乗客は、シンガポールの島々の姿を見つけ、歓喜の声をあげた」。
「望遠鏡で近づいてくる島々を見ては、また歓声があがった」
 少ししてシンガポール上陸。するとインド人の労働者達が船の荷物を下ろしに船に上がって来た。
「その姿は、白布を頭部に巻き赤腰巻を身につけ眼光の鋭く怖い顔に見えた」
「更に真っ赤な唇、白い歯、黒光りする肌、大きな骨格の人間離れしたインド人の集団を船客を見ていると彼らが近づいてくる度に乗客達は大騒ぎをした」

「その夜、船に乗り合わせた人達と車に分乗し市内見物に出かけた」
「すると、ここは南国、多くの美しい花が一年中、咲き乱れると聞き感心した」
「まず、博物館へ入ると不気味な程・鮮やかな色の花、食人種やゴリラの剥製があった」
「やがて日本人街に向かうと氷屋、果物屋、土産屋、食堂があり呼び込みをしていた」
「それらの店には古ぼけた竹ランプだったので日本の田舎を想像した」
「その後、食堂、飲み屋と売春宿が一緒になった様な不気味な食堂に入った」
「店に入ると冷たいビールと鶏や魚の揚げ物、ステーキ、南国のフルーツが出された」

「数人の地元の若い女が男たちを誘う仕草をして男たちにまとわりついた」
「同席していた女たちは怒ったような怖い顔をしてにらみつけた」
「それを見ていると何とも面白いものだ」
「結局、1時間もしないうち車に乗り込み誘惑の館を後にして船に戻った」

「翌日、昼食後にグロテスクな程、真っ赤な花の咲く南国シンガポールを後にした」
「その後、シンガポール・昭南島を出て6日目にコロンボへ到着」
 そして下船し、地元の人力車で市内観光をして回った。しかし、どこへ行っても金をせびるばかりで見るべきものもなく船に戻ってきた。

 その後、4日して紅海にさしかかった、
「航海中で最も暑いと言われる所だけあって冬でも半袖シャツで充分だ」
「そこからスエズ運河を通り12日かけてエジプトのポートサイドへ向かった」
「この時代、治安の問題でカイロへの旅行はできなかった」
「地中海に入り2日目に1919年の正月を迎え新年のパーティーが諏訪丸で催され、おとそ気分に浸った」
「しばらく行くとナポリ、やがて最終目的地、フランス、マルセイユに着くと思うと期待に胸膨らませ万感の思いがこみ上げた」

 
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