第10話:欧州航路で1ケ月の船旅2

文字数 1,264文字

 Y氏と、佐藤さん、山田さん、池田さんなど10人で上海港に降り、対岸には無線電信局、倉庫、多くの会社が軒を並べていた。初めての寄港地で少し興奮し多くの現地の人達が集まるので「財布を盗まれない様に用心しろと言われ緊張感が走った」
「馬車に乗り美しい景色と回りに漂う独特の臭いを感じながら馬車は走った」
「フランス公園と呼ばれる所で、降りて、庭園を散策した」
「しかし支那人立ち入り禁止の看板を見ながら歩くと白人の子供が遊んでいた」

 東洋一と言われる競馬場に行くと競馬で泣く者と儲けて一旗あげた成金者とに分かれ、またコカインの密輸も盛んに行われていて治安はあまり良くないようだ。地元の公園に行くと、
「支那人の物売りがうるさく、閉口して、すぐに馬車に戻った」
「地元の往来は、どこも混雑して散歩する気にならないので船に戻った」
「唯一の楽しみは日本人同士で集まって、夜遅くまで歓談する事だった」

「その他、一緒に乗り合わせたスイス人から1日30分のフランス語の講義を受けた」
「日本在住の英国人宣教師と紅茶を飲みながらの午後の英語での歓談も楽しかった」
「しかし発音に厳しく、よく、言い直しを命ぜられるのがめんどくさかった」
 上海を出航して4日後に香港へ到着。小舟が近づいて来て、船に乗り込んで英国人の船先案内人が乗船してきて、港まで案内してくれた。その途中で英国旗を掲げた軍艦、潜水艦、巡洋艦が停泊している姿が見え、香港は99年間の英国の借地なのだと思い知らされた。

「上海は近代的な港で立派で香港の町並みは神戸に似ていた」
「しかし規模と品の良さは雲泥の差があった」
「香港は上海に比べて何となく上品で文化的な感じがした」
「やはり英国の統治されているだけのことはあると妙に感心した」
「その後、香港島の頂上の見るためにケーブルカー乗り場へと急いだ」

「案内人から切符を買いケーブルカーに乗ると斜度45度もある上り坂を勢い良くで昇った」
「ケーブルカーの窓から見る景色は熱帯植物のうっそうとした風景」
「それを見てると香港島の全景が見え飛行機から見た香港島の最初の景色が思い出された」

「見るもの全てが様式で東洋の雰囲気でない事を強く感じた」
「やがて、頂上で数人ずつに分かれて人力車に乗って頂上からの景色を楽しんだ」
「頂上から下った後は有名な香港ホテルを見学しに行った」
「香港ホテルに入ると純白ドレスの貴婦人と天使の様な可愛い子供がゆっくりと歩いていた」
「まさにヨーロッパのホテルにいるかのような錯覚を感じた」
「その後、植物園を見学するとダリア、朝顔、カンナが咲き乱れて冬なのに夏の様だった」

「夜になり香港から九龍島への渡し船に乗り香港の夜景を九龍島から見た」
「観光船は、客を満載にして出発し10分後、対岸の九龍島に着いた」
「岸壁から香港島を見回すと全島にきらめく灯火の光が誠に美しかった」
「山の上の灯火は星のようで、町の灯りは、きらめく宝石のようだ」
「友人たちにも見せたいという衝動に駆られるほど素敵だった」
 しかし、全体に、香港の物価は上海よりも高いと感じた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み