汝のパンツを奪った敵の合法ロリを愛し、迫害する者を昼飯に誘いなさい。
文字数 2,975文字
羽里学園の校門まで辿り着いたときだ。
俺と召愛は思わず立ち止まって、同時に同じ言葉をボソッと呟いてしまった。
羽里だ。
小さなお姫様は、まだ生徒たちがほとんど登校してきてない校門の前に立っていたのだ。
そして、髪型はツインテール。
まあ、なんだ。下手したら小学校高学年にすら見えなくもない容姿せいで、ばっちり似合ってしまっていた。
俺と召愛は、なんとなく気まずくて、無言で顔を見合わせちゃってたよ。
さっき、『ツインテールが許されるのは、中学生まで』とか言ってたわけしな。
「おい召愛。その単語はキリストの生まれ変わりを自称する身で、どうなんだ……。
元々、エロゲー用語だぞ。
というか、正しくは18歳以上の人物に対して使われる言葉であって、見た目が実年齢より著しく低い未成年に対して言うのは、間違った使用法だ」
とりあえずこいつは、全キリスト教徒へ、土下座した方が良い
俺たちが、なかなか校門に近づいて来ずに、ごちゃごちゃ駄弁ってたのに、業を煮やしたようだ。
ご立派なことだ。
んな事せんでも給料は変わらんだろうに、というか給料とか貰ってるのか、こいつは?
にこやかに挨拶した召愛に対して、羽里は腰に手をあてて、不機嫌そうな顔で迎えうった。
お前、正直に言いすぎだろう……。
ていうか、なんだ、これ、羽里が俺を睨んでるんだが、どういうわけだ。
俺が言い出したわけじゃないぞ。断じて違う。
「事実だけど、すげえ違う。政治家の発言の一部だけを切り取って、悪役に仕立てあげちゃうお茶目なマスコミくらいなんか違う!
いいか羽里、俺たちは変な話しをしてたわけじゃない。
お前の今日の髪型がよく似合ってるな、と、話しをしてたんだ」
羽里は自分の結わえられた髪の片方に、さりげなく触れながら言った。
ちょっと白々しいほどに取り繕いすぎたかなと、自分でも思ってしまったが――。
うおぉ、壮大に取り繕い方を、踏み外した感じじゃねえか……!
「でも、確かに、この髪型は、幼く見えすぎるのではと思っていたところでした。しかし、美容の知識がないわたしが、スタイリストにそう指摘するのは失礼にあたるので、黙っていたのですが。
男性から見ても、やはり……幼く見えてしまうのですね。
その、合法ロリ、でしたか?」
「もう結構です。
コッペくんがそのように、わたしへ取り繕う必要はない。
例え、あなたが、わたしの家族を殺害した殺人犯であろうと、校則の下に公正公平に扱う。
わたしにどんなに悪感情を抱かれようとも、気にしないでください」
「もう結構だと言ったはずです。
ついでに述べておけば、美容に興味がない相手に対して、外見を褒めても、何の意味が?
さらに言えば、可愛いと、あなたが呼ぶ、この容姿に、好きで選んで生まれたわけでもない。一切の価値を感じてません。以上です」
以上ですか……。とりつく島もなかったとは、この事だな。
朗らかに俺の背中をバンバン叩きなさる召愛さん野郎が恨めしい。
立ち去り際。召愛は羽里へ振り向いた。
そうきたか。
召愛は親友に戻りたいと考えているんだろうけど、羽里は、どう思っているのだろう?
俺たちは校舎へ向かって、校門から続く遊歩道を歩き出したよ。
七時を過ぎたばかりの学園は、数えるほどしか人影がない。
すげえ上機嫌だなぁ、お前。
よっぽど嬉しかったのか。
俺たちの目の前にいよいよ、昇降口が迫って来ていた。
戦場への入り口だ。