ゴルゴタの大講堂
文字数 3,221文字
生徒と職員、全員が集まった。
召愛と遊田もだ。捜査班から解放され、出席した。
生徒や職員からは、まったくリアクションがなかった。
全員が何のことだか、意味がわからないといった顔をしている。
そりゃそうだろう。
学校が解散なんて、普段は耳にしないワードだ。
消え失せます。消滅、します。
みなさんは、生徒ではなくなり、職員でもなくなります。
わたしは理事長ではなくなり、生徒でもなくなります。
15分後にです。そこで、全てが――
ボロボロと涙を流し、声が詰まってしまった。
それで、みんな、理解してしまったのだろう。
羽里が言っている事が、悪い冗談などではなく、真実なのだろう、とだ。
現時点では、召愛が喫煙や援助交際をした確かな証拠もありません。
真犯人の追求は外堀までは埋めることができましたが、特定するだけの、証拠もありません……」
その遊田へ、ヤジが集中し始めた。
だが、こんな状況で言い返しても無駄だとわかっているのだろう。
遊田は、きつく目を閉じ、耳を塞いで、ひたすらに耐えるようにしている。
左隣に座っていた、召愛からだ。
それはまるで、映画館で恋人同士が寄り添うみたいな感じでだ……。
そして、小さな声で言った。
周囲が騒然とする中で、俺にしか聞き取れないであろう声で。
なんで、このタイミングで、そんなことを……!
「その上で、頼みがあるんだ。
これから先では、私とは関係を絶って欲しい。
君に一切の迷惑を掛けたくない。
大言壮語を吐いた生徒会長でありながら退学になった、どうしようもない女の恋人に、君をしたくない。
もし今後、他人から私との関係を尋ねられても、私のことなど知らないと答えてくれ。何度でも他人にはそう言ってくれ、一回、二回などと言わず、三回、三十回、三百回でもだ」
俺は召愛が何をしようとしているのか、わかってしまった。
こいつは、無実の罪で自首をするつもりだ。
そうして、この学校を救おうとしている。
俺はそれを、しがみつくようして強引に止め、そして――
俺の声は思いの外、良く響いた。
大講堂にいた全員、俺に振り向き、注目した。
そして、俺は、召愛にだけ聞こえるくらいの小さな声で、こう言った。
今後は俺との関係を聞かれても、縁を切ったと言え。
そして、まあ、なんだ……その、俺も、お前を愛してる。
原稿用紙三百億枚分だ。どうだ、すごいだろう、お前の100倍だ」
仕方ないから、俺は座席の間の通路を、ステージへと歩いて行ったよ。
周りから色んな声が聞こえた。
ありとあらゆる罵声が飛んできた。
俺は、ステージに上がり、羽里の演台の前に立った。
んで、置いてあったマイクを取って、観衆へと体を向けたよ。
なんでそんな意外そうな顔してんだよ?
犯人はヤスなんて、昭和からのお約束だろう?
実は、前々から、召愛とは揉めててな。
そろそろ飽きてきたし、他の女に乗り換えようかと思ってたんだ」
しゃーないから、せめて学校から強制退場を願おうと思ったわけだ。
つーことで、選挙事務所室にタバコを置いたのは俺だ。
合成写真をばらまいたのも俺だ」
俺を買収して真犯人として名乗り出させたんじゃないか、なんて、お前の母親がイチャモン付けてきて、振り出しに戻る。
俺が真犯人じゃなきゃいけない。一切、恩を返すな。わかったな?」
おれのさいきょうのがっこう。
そして、召愛。
さようなら。