【三日目】二千年前の土木作業員のおっさんが言った。「人は過ちを繰り返す」
文字数 2,260文字
俺は朝から出かける準備をしていた。
今日から俺の新しい人生が始まるのだ。
気分を新たに歩んで行こうと決心していた――までは良かったのだが。
人は過ちを繰り返す、って奴だ。
そうは分かっていても、世の中こうしない事には、どーにもならんのだ。
そしたらだ。
誰か居たんだ。ドアのちょっと前に。で俺は飛び出した勢いが余って――。
――ごちーん!
玄関前で大激突しちまったんだ。
しかも、あれだ、こう羽里学園の制服のミニスカートが、めくれてしまっていてですね。パンがチラッというか、はいパンチラって奴でした、はい。
ちなみに、水色の縞々パンツでした、はい。ニーハイも穿いてました。
んで、気づけばガン見してたらしくてですね。
と、召愛さんが拳を振り上げたかと思えば――
――ごちーん!
食らったぜ。ゲンコツ。
召愛はどっかに電話をかけて――
朝の閑静な住宅街に、突如、ヘリの爆音が響き渡ってだな。
生活道路を歩いてる通勤通学の人たちが、何事かと空を見上げるわけだ。
道路の上空に現れたのは大型ヘリコプター。それが巻き起こす強い風が、召愛の髪をバタバタなびかせ始めたぜ。
俺は思わず叫んでた。
アメリカ大統領専用機として開発されていた物だったが、予算削減によって完成間近で開発中止になった悲運の機体だ。
それがなんで、こんなところに?
まるで『チャリを借りてきた』みたいに、のたまったのだが……。
まさかの羽里が買い取っていたのか……。
塗装がアメリカ所属時のままなのを見るに、ほんとに購入したばかりなのだろう。
なんて言ってる間に、ヘリのキャビンの扉が開いて、クルー二名が、ラペリングロープで、俺の家の前に降りてきた。んで、俺と召愛をベルトでロープに固定してヘリに引き上げてだな。
出発進行。ヘリはどこかへ向けて飛び出した。
我を忘れてハァハァしてしまってたが、俺は見学の行き先を告げてなかったはずで。どこにも到着などするわけないのだが。
窓から、外を見たよ。
眼下には、学校らしい大きな敷地の建物が見えた。
つーか、なんかすごく見覚えのある校舎だ。
というかだな。敷地の隅っこに――あるじゃないか。
全長263メートル。全幅38.9メートル。基準排水量6万4千トンの大戦艦――
大和が! 実物大セットが!
ああ、大和。なんて麗しい姿なんだ。と、俺は思わず涙ぐんでしまったんだが、理解した。ここが羽里学園の上空であるとだ。
退学になったのはマジできつかったんだぜ?
やっと今日から、新しい学校を探そうって、やる気出してたとこだ。それをな、こういうネタにするのは、お前相手だって……怒るぞ?」
ヘリが校庭を見やすい位置まで旋回しようとしている。
そして、俺は目の当たりにした。
校庭には――大量の机が、なぜか並べられていた。
何かしらの規則性で、並んでいるようだった。
そして、ヘリが学園の南側まで来た時だ。
机の並びがカタカナを形作っている事に気づいた。こう、書いてあった。
『オカエリナサイ。コッペ』