遊田イスカは言った。「愛とは時に、フライング土下座で、すごくダサい」
文字数 2,438文字
羽里学園のグループホーム寮。
家出する先のあてがあると、俺を案内してきた遊田の目的地は、なんと、ここだった。
色々と悪い予感がして、溜息を吐きたくなったが、今さら、家に帰れと言うわけにもいかない。
んなことすれば、それこそ、翌朝に殺人少女Aの友人に成っていかねない。
今は、遊田にしてもオヤジさんにしても、頭を冷やす時間が必要だ。
とりあえず中に入ろうと、鍵を開けた。
学生証のIDカードがカードキーになる。
遊田にも、同じように学生証のカードを読み込ませたよ。
これをやらないで部外者が寮に入ると、派手に警報が鳴ってしまう。
そして、俺たちがとりあえず居間へ行った時だ。
――ドタドタドタ!
――ドタドタドタ、
――ドタドタドタ!
そして、遊田を見るや――
そういや……!
歩いて三分のスーパー『ツルカメ』に飲み物を買いに行ったまま、消えちまった事になるんだな、俺……。
慌ててスマホを確認した。
着信履歴が15分ごとにあった。
おお……、これはマジに済まんかったぜ……。
「それについてはだな。
召愛にも事情を理解してもらわにゃならん。
落ち着いて話し合おう。
たぶん、ちょっとばかし、齟齬が発生しかねないというかだな……。
冷静に、聞いて貰いたい合いたいことがいっぱいある」
と、遊田が横から口だしてきてだな。
例によってこう、ひっついてくるわけだ。
さすが遊田だぜ。
受けれる恩を、全て受け、それを仇で返してくるスタイル。
まさにクズ王者の貫禄。
そこに、しびれないし、憧れたくない。
俺は、ひっついてこようとする遊田を押し返したね。
顔をギューギューとだ。
そしたら。
とか言って、遊田は自分のスマホを取り出してだな。
父親をぶち切れさせた例のラブホ前での写真を見せようとして――。
俺は速攻で阻止!
スマホ取り上げて自分のポケットに突っ込もうとした――のだが……。
それをさらに、召愛さんに阻止されちゃいました……。
召愛の奴め、素早くその画像を見てだな。
なんかこう、目が据わっちゃいました。
『ハンター×ハンター』でゴンがネフェルピトーを粉砕したときの目に、そっくりだと俺は思ってしまった。
そう、つまり、殺意的な何かが心の奥底で、激しく燃え上がってる目である。
遊田ェ……。
つーか、なんとなく自然に、謝っちまったが。
なんで俺は謝ってるんだ……。
別に召愛と付き合ってるわけでもないのに。
物わかりが、およろしくて、大変結構!
と、召愛はいきなり自分のスマホをいじりだした。
俺はフライング土下座した。