グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ!
文字数 3,514文字
そして、大討論会が終わった放課後。
召愛と遊田と三人で、寮への帰路についた時、
俺は安堵の溜息を付いていた。
召愛を生徒会長にするために、全力を尽くしてきたわけだが、それがめでたく達成される見込みだ。
思えば波瀾万丈ぎみだった。
俺の高校生活なんて、せめて平凡なものになってくれれば、上出来だろうと思ってたのが、ろくでもない事件や、のっぴきならない事態や、ずっこけるようなハプニングや、ラッキーでスケベな展開に恵まれてしまった気がする。
惜しむらくは、ハーレム展開が、ストレートな物ではなく、斜め上気味だったことだろうか。
全ての問題が解決された今後は、この辺の改善に期待する次第である。
召愛に毒殺されない程度にだ。
いや、むしろ、あと一人くらい男子の入寮者が来てくれてもいいんじゃと思う。
ハーレムが楽しいのはフィクションの中だけで、現実で異性の中に一人ってのは、普通に居心地がよろしくないだけだ。
ノビノビと、つるめる男の友だちが一人くらいは身近に欲しい。
なんて事を考えながら、寮の前に帰り着いたらだ。
なんか、ヘリが着陸してた。
んで、そこから家具などが、運送業者のお兄さんによって中に運び込まれてたわけだ。
まさか、ほんとに男子が来てくれたりしたのか?
俺は喜び勇んで、玄関に入り、靴を脱ぎ捨て、中にいるであろう、入寮者を探した。
けど、どこにも居なかった。
その代わり、居間に羽里が居た。
引っ越し作業をテキパキ指揮してた。
入寮者を案内するために、来たのだろう。
俺は頭を抱えた。
そこで、召愛と遊田が居間に入って来た。
てことは……え、まさか?
召愛さん、感無量といった具合に、情けない声でそう呼んでだな。
羽里をガバッと抱き寄せてしまった。
ぬいぐるみみたいにだ。
んで、すんごい頬ずりし始めた。
摩擦熱で発火するんじゃないかという勢いで、グリグリとだ。
グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ!
羽里はと言えば、このぬいぐるみ扱いに若干、釈然としない様子で、仏頂面ぎみでグリグリされてるわけだが、嫌でもないらしく、大人しくされるがままになっている。
それは、ややシュールな光景であって、
あんまり『キマシタワー』という雰囲気ではない。
なんにせよ。召愛たちにも日常が戻って来たらしい。
と、やはりグリグリされながら、羽里さんは述べました。
羽里は、やっぱり、まんざらでもない様子だった。
そして、遊田はボソッと俺に言った。
なんて俺たちが話してたらだ。
グリグリされてた羽里が、テレビの前に山積みになったDVDのケースを目に止めてんだ。
こうケバケバしいパッケージで、きっと育ちの麗しい彩お嬢様には、見慣れない物だったんだろう。それが何か分かってない様子だった。
まあ……あれだ。
〝ソレ〟は〝アレ〟だ。女どもが一昨日に俺の部屋から持ち出したエロDVDだ。
んで、羽里はそのDVDケースの山が、何だろうかと、テレビの前に行ってだな。
手にとってしまったんだ。
などと読み上げてしまって、ケースの裏を見てしまったんだ。
そこにはまあ、あっはーん、で、うっふーん、な画像で飾られてるわけでですね。
羽里さんは、ケースを持った指先から真っ赤になっていき、やがて頭のてっぺんまで茹で上がったようになり。
その場に、ゴトン、と倒れたぜ。
召愛が駆け寄った。
俺は極めて適当な事を召愛に吹き込んで、さっさと自分の私室に行こうとしたよ。
鞄とかの荷物を置いてくるためだ。
んで、二階への階段を上ってたら、後ろから遊田が追いかけてきて。
そして、私室に入って、鞄を置き、ポケットからスマホや財布、生徒手帳なんかの諸々を出してる時だった。
ポケットの中に、あるべきの物が無い事に気づいた。
選挙事務所室の鍵だ。
参ったな。
どっかに落としたか、忘れて来ちまったらしい。
幸い、もう選挙も終わりだし、誰かに拾われても実害は無いだろうが……。
学校備品の紛失は、できるだけ探さなきゃならん校則になっている。
しょーがない。めんどいが学校に戻るか……。
俺は玄関に行き、靴を履いたよ。
そのタイミングで、遊田も二階から降りてきた。
だが、防犯カメラがあるかぎり、何か起きても、すぐに解決する。
だから召愛たちには、この事は今は言わないでおいてくれ。
選挙が終わって疲れてるところに、余計な心配をさせたくない。
けど、お前。ずいぶんと、召愛の事を心配してるんだな」
玄関から外へ出て、雑木林の道を校舎へ向けて歩いたよ。
そうして、すぐだった。
後ろから、忍び寄ってくるような足音が聞こえたんだ。
なんだと思って振り向くよりも早く、俺の両目は塞がれた――