受難 ③
文字数 2,542文字
その方法は、親友の罪を暴くことによって?
なお、この部屋の防音は完璧で、他人に声を聞かれることはありません。集音マイクも、作動していません。遊田さんから聞き出したことを、他人に言うかどうかは、コッペ君にお任せします」
ああ、くそ……。
こんなの、どうしろってんだ?
わかりきってるだろ。
やるしかない。
やるしか、ないんだ。
遊田が、もし真犯人ならば、あいつを説得して、自首させる事も考えなきゃならない。もしかしたら、それ以外の、もっと良い解決策だって見つかるかも知れない。
これからどうするにしても、真実を聞きださないことには、何も始まらない。
俺は、理事長室の真ん中に突っ立ったまま、スマホを取り出し、電話をかけた。
しばらくの呼び出しのあと、やっと繋がった。
だって、みんなそこを知りたがってたわけだぞ?
つーか。寮の個人郵便受け?
そこに、遊田が何をしていたかの、答えがあるってことか?
走った。
校内を駆け抜け、昇降口から出て、雑木林の道を全力疾走だ。
寮に帰り着き、ドアを急いで開け、中に入った。
そして玄関に設置されている個人郵便受けの中を見てみた。
シンプルな白い便せんが、あった。
中には、何か硬い物が入ってるのがわかった。開いてみた。
鍵が、でてきた。選挙事務所室の鍵だ。俺の学生番号が刻まれている。
間違いなく俺の失くしてた物だ……。
それと、なぜか、ボタンも一つだ。
メモ用紙も入ってた。
こう、書かれてた。
誰かに拾われたら大変だと思って、開門時間から探し回ってあげたんだからね。
昨日探してない場所を、そりゃあもう、一生懸命歩き回ったわ。
そしたら、校舎裏の茂みに落ちてたのを見つけた。感謝しなさい。
それとボタンもあったけど、これも、あんたの?
スイーツ美味しかった。ありがと。
イスカ
おい、遊田。
おい、遊田!
なんだよ、お前……。
俺のために、こんな事してくれてたのかよ。
ああ、くそう。
お前は、ほんと、どーしようもないほどに、
心の友じゃねえか!
馬鹿だな……お前。本当に馬鹿だ。
こんなの、捜査員に言っちゃえば良かったじゃないか。
でも、どーせ、お前のことだ。
振られた相手の気を惹こうと未練がましく思われるのが嫌だからとか、どうでも良いプライドに、拘ってんだろうよ。
でもな、お前がやってくれてた事は、誰にも引け目を感じることじゃない。
胸を張れよ。
俺は学校へ走って戻りながら、羽里へ電話を掛けた。
走りながら、事の次第を説明した。
ボタンもその時に、茂みの枝などに引っかけて落としたかも知れない。とすれば、真犯人に繋がる有力な手かがりになりえます】