遊田イスカは言った。「本当の愛って……ただの本能?」
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そんなわけで、漫画喫茶へ行き、遊田お勧めの劇場版ドラえもんトップ3+最新作のDVDを持って来て、ペアシートで見始めたわけだ。
晩飯代わりに、ジャンクフードを注文しながらね。
遊田はチーズハムサンドイッチが大好きらしく、そればっか食ってたな。
遊田はドラえもんを見てる間ずっと――。
そんなにまで真剣になって、ドラえもんを見ている遊田を眺めてて、俺は確信したよ。
『ジャイアンがのび太を思いやって、手を差し伸べる世界』
遊田が心の奥底で望んでいるのは、やはり、そういう事なんだろう、と。
漫画喫茶を出た直後に、遊田は大きく背伸びをした。
桜木町の街はすっかり夜更け。
人通りも多くなく、走っている車はタクシーばかり。
俺は遊田の後について、海側へと歩いていった。駅とは反対側だ。
目がチカチカしてたよ。文化祭で映写技師をやったあとで、
さらに6時間くらいぶっ続けで、あれだからね。
もし、そういう分かり易い動機なら、最初の時点で、ラブホに直行してたろうよ。
けどだ。
実際、なんで、俺はこいつに付き合って、こんな時間まで、ここに居るのかと問われると、答えに困る。
一つ言えることは、動物園で、本当の遊田を知ってしまったことだ。
クズクズしい女子高生ではなく、元子役スターでもなく――。
ただ、誰かから本当の愛を向けてもらいたいと願う、そういう女の子としての遊田だ。
俺たちは日本郵船博物館の近くの、万国橋の手前まで来ていた。
この先にあるのは、『みなとみらい』と呼ばれる一角で、赤煉瓦倉庫や、ミニ遊園地コスモワールドなんかがある。
遊田が指さしたのは、夜の横浜にそびえ立つ、光の大時計。
『大観覧車コスモクロック21』だった。