3-8 失敗

文字数 1,252文字

 え?
 私の携帯(これ)は監視用として渡されたものです
 !!
 今の会話、筒抜けだったかもしれません

 途端に緊張が走る。蕾生(らいお)鈴心(すずね)に初めて会った時に鳴ったサイレンを想像した。(はるか)も身構えて部屋の隅々まで注視する。

 

 突然、外で激しく雨が降り始めた。ザアザア降る音が全てをかき消すように部屋中を満たしていく。


 

 数分経ったが屋敷の周りも部屋の中も静けさに満ちていた。ただ雨の音を除いては。

 別に何も起きねえな
 うん、この前みたいにサイレンでも鳴って、物騒な人が押し込んでくるかとも思ったけど……
 だな

 考え過ぎじゃねえか?

 どうかな。さすがに銀騎(しらき)詮充郎(せんじゅうろう)でもそれは短絡的だし、泳がせてるのかも
 ねえ、すずちゃん


 それ、兄さんが中学生になる年齢になったからってお祝いにくれた携帯電話だよね

 そうですが
 贅沢品だから、お祖父様には内緒ねって兄さん言ってたよね?
 ええ
 つまり、すずちゃんは兄さんのことも信用してなかったってこと?
 あ……
 ……
 ……お兄様には良くしていただいているとは思っています


 でも、あの人はお祖父様の言いなりですから

 そう……
 ……
 ──おい、鈴心(すずね)
 !
 今の状況が緊急事態だったとしても、お前は銀騎(しらき)に甘え過ぎだ
 ──
 お前のいる環境は俺達には想像もつかない過酷なもんなんだろうけど、何も知らない銀騎(しらき)に当たってんじゃねえ
 ……
 これは、俺達三人の問題だ


 お前が勝手に抱え込むのを(はるか)が許したか?


 俺とお前は(はるか)の手足だ、余計なこと考えるのは頭に任せとけ

 ライくん、もしかして何か思い出した?
 いや、なんかそんな気がした
 ──ハハッ、さすがライくん


 昔からリンに意見ができるのは対等な君だけだったよ

 ……
 リン
 はい……
 まずは銀騎(しらき)さんに謝ろうか?
 星弥(せいや)……、ずっと黙っていて、すみませんでした
 ……
 星弥(せいや)?まだ怒ってますか?
 うふふふ!
 ──!
 すずちゃんは、つまり、わたしに甘えてたんだね?
 え、いや、まあ、その……
 すずちゃんは、わたしだから甘えられるんだよね?
 そうだと思うぞ
 ──ライ!!
 やーん、すずちゃんたら!


 もっと甘えていいんだよおお!

 思いっきり抱きしめて更にウリウリする星弥(せいや)にされるがままの鈴心(すずね)は今にも窒息しそうだった。

 それでも一切抵抗しない様は二人の間に姉妹愛のようなものを感じられて、些か変態的ではあるが微笑ましくもある。

銀騎(しらき)星弥(せいや)、本当に読めない女だ……)
(もしかしたら一番敵に回してはいけないのは彼女かもしれない……)
 せ、星弥、苦しい、です
 わっ、ごめんね
 ……
 すずちゃんが兄さんのことも疑ってるのはちょっと寂しいけど、わたしは兄さんのことは信じてる


 お祖父様の言いなりだとしても、少しでもすずちゃんに良い様にしてくれる──すずちゃんに酷いことはしないって

 私もそう信じたい、です
 うん!
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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