1-1 覚えられない夢

文字数 711文字

(夢の中)


 ざわざわと木々が煩いほどに揺れている。

 視界は真っ暗で、もう何も見えない。お前が泣いている姿さえも、何も。

「ああ……これはおれの罪だ」

 違う。お前は何も悪くない。

 俺が弱かったから、守れなかった。


 赤い、赤い葉が生い茂る木の下で彼女は言った。

「もっと自分のことを考えていい」

 俺はそうは思わない。あいつの方がずっと辛い選択をしている。だけど彼女は首を振る。

「キミは何になりたいの?」

 その答えは考えたこともない。


 無機質の中で、アイツの声にならない叫びを聞いた気がする。

 だめだ。その手をとってはいけない。

 けれどそれを伝える術がない。


 

 ごめん

 全部、俺のせいだ

(窓の外から)


 ラーイ、蕾生(らいお)くーん
(のっそり起き上がって窓を開ける)


 ……わりぃ、今起きた

 相変わらずだなあ。時間だよ
 ちょ、待ってくれ。すぐ支度する
 焦らずに急いでね
 母親に持たされたおにぎりを口に咥えたままの蕾生(らいお)は玄関のドアを開けた。

 にこにこ笑いながら幼馴染の(はるか)が立っている。

(もぐもぐ)

 ……はよ

 今日も大きいねえ、おにぎり
 フツー
 中身は?
 シャケ
 へえ、いいじゃん
 しばらく歩くと、学校の門が見えてきた。
 ライくん、そろそろネクタイちゃんとしようか
 あー……、めんど
 つまんないことで怒られたくないでしょ?

 ただでさえライくんは目立つんだからさ

 わかってる……
 蕾生(らいお)は渋々ネクタイを締める。

 校門にさしかかり、(はるか)はわざと大きな声で教師に挨拶した。

 おはようございまーす!
(猫背で足早に通り過ぎる)
(ふう、今朝も何事もなく通過完了!

 まったくライくんは世話が焼けるよねえ)

 ふわあぁ……
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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