1-7 秘密だった力

文字数 607文字

 急に白くて無機質な道路が終わる。先に続くのは舗装のしていない道路で、土が剥き出しだった。

 すぐに煉瓦作りの大きなプランターの列に突き当たった。中には成人男性ほどの背丈の木が植えてある。

 植木の上から辛うじて見えるのは、芝生の広場とその中央に立っている温室のようなガラス張りの建物。あまりに違う景色である。

 ねえ、ライ

 この鉢植えのひとつ、動かせる?

 え?
 ちょっと動かしてよ
 マジで言ってんの?
 蕾生(らいお)の目の前にあるものは、鉢植えと一言で言っても六十キロ以上はありそうだ。

 だが、蕾生(らいお)はこれを軽々と持ち上げることができる。

 この力は家族以外では(はるか)しか知らない。

 お前、今になって何言ってるんだ?
 わかってる

 無茶なことを言ってるのはわかってるよ

 お前が隠せって言ったんだぞ


 ──それでもやれって言うのか?

 お願いだ、ライ
 ……わかった
 蕾生(らいお)はプランターを持ち上げ、人が通れるくらいの隙間を作り、静かに地面に置いた。
 ありがとう──
 (はるか)
 小さくお礼を言った後、(はるか)は駆け出した。


 蕾生(らいお)も後を追って走る。

 その温室の入口に着くと、(はるか)はドアノブに手をかける。鍵はかかっていなかった。

 

 中央に大きな木が植えられていて、その下で一人の少女が椅子に腰掛けて、本を開きながらこちらを見ていた。

 肩ほどまで伸びた黒い髪で、白いワンピースを着ていた。

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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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