ああ……。だからなんとしても星弥は目覚めさせなければならない
馬鹿を言うな、
皓矢!この子はその為に生まれた子だ!
実験は成功しようとしているのに!
お祖父様!
星弥の実験は凍結したはずです!
この子には普通の人生を送る権利がある!
では、その凍結を今ここで解除する
ウラノス計画は再び動き出すのだ!
お願いします!
星弥だけは見逃してください!
萱獅子刀を使わせてください、因子の沈静化を図るんです!
……あまり失望させるな、
皓矢よ
そもそもあのレプリカは鵺化を促すためのものだ。逆の用途に使うなど言語道断!
そうして机のボタンを押しながら怒りに任せて叫ぶ様は鬼のようで、それまで必ず余裕を垣間見せていた詮充郎はもうどこにもいなかった。
詮充郎は後ろに現れた棚から萱獅子刀を取り出し、その刀身を引き抜く。鈍く光る刃には非情な鬼の姿が映っていた。
力を持たないお前が使えるのか?それは呪具なんだろ?
銀騎家に代々伝わる家宝、
幽爪珠──その成れの果てだ
これには我が息子がこめた術式が施されている。私でも扱える、な
そんなことが?考えられない、呪力なしに発現する術なんて──
皓矢よ、お前の父は偉大な陰陽師だったのだ
その血を引いているお前が、小娘一人の命乞いなど恥を知れっ!
皓矢、結界を張りなさい。これから偉大なる鵺が顕現する
お願いします、お祖父様……
星弥を、星弥を──
入口付近で控えていた佐藤は短い返事とともになんの前振りもなく、素人の永や蕾生にもわかるような堅牢な結界を部屋中に張った。