まあ、仕方ない。皓矢、データはとれたか?
この部屋には生体解析AIを搭載した監視カメラを数台設置しているのでね。外からわかる程度の情報はとらせてもらったよ
彼らが座っている長椅子から接触して、微小ではありますがその気の流れも式神に写しました
──話し合いの余地なんて最初からなかったな、帰るぞライ、リン
詮充郎と
皓矢の汚い罠のかけ方に辟易した
蕾生はすぐさま立ち上がった。
だが、その瞬間、蕾生の全身に電流が走った。手足の自由がきかない。そこから動けなくなった。
永が即座に状況を理解して皓矢を睨んだ。皓矢が金縛りを蕾生にかけていたのだ。
完全に優位に立ったと確信して笑う詮充郎と、皓矢の術により自由を奪われた蕾生の苦しい表情を見比べて、苦々しげに歯噛みしながら永はもう一度ソファの端に座り直した。
永がそうしたことで、蕾生にかけられた金縛りはすぐに解かれる。その反動で体のバランスを崩し、ソファに腰を沈めた。
何故、お前だけ転生しても記憶を保持できないのかは知っているか?
──随分と慎重なことだ。まあ、それも仕方のないことだが
詮充郎はニヤリと笑って机の上にあるボタンのようなものの一つを押した。
その言葉と同時に部屋の壁の一部が機械音を立てて剥がれていく。シャッターが上がるように、中から水槽のようなガラスが見え始めた。
最初は部屋の明かりが反射されて何があるのか分からなかったが、壁の一部が上がり切る頃にはその禍々しい物体が一同の前に姿を現した。
頭は猿、胴体は猪、尾は蛇、手足は虎。
ガラスの奥に、そう形容できる黒ずんだ物体が二つ。
虚ろな瞳を携えて、あらぬ方向を向きながら空しさを語るようにそこに存在している。
蕾生にとってそれらは初めて見るものであるけれど、どこか懐かしいような不思議な感覚があった。
この遺骸が、我々が鵺と呼ぶものだ。よく見たまえ、僅かだが個体差があるだろう、そこが素晴らしい