4-1 忘れてしまった夢

文字数 570文字

(蕾生の夢の中)
 体は大丈夫か?
 何がだ?
 あれだけ化け物の返り血を浴びたんだ


 何か異常をきたしてないか心配で心配で

 ──夜も眠れないか?
 そうそう。だから一杯付き合ってもらおうと思って
 うまい
 だろう?奥の秘蔵のやつをくすねてきた
 格別だな
 フフッ
 ──で、眠れない原因はあっちの方だろ
 ばれたか


 あれから少し塞ぎ込んでいると聞いてな

 そりゃあ、あんな化け物を間近で見たんだ


 お前は忘れてるかもしれないが、あいつはまだ子どもだぞ

 それはその通りなんだが──


 リンは、何かを抱えてるんじゃないかと思う

 何かって?
 わからない
 まあ、でも、そうだな。今日び何も抱えてないヤツなんていねえよ
 ──お前もか?
 俺はお前を背負うので精一杯だ
 ──そうか


 朝になったらリンに干し柿を持っていってやろう

 また奥からくすねてくるのか?
 なあ、おれの家のものなのに、どうしておれは自由に持ち出せないんだ?
 ははっ、──知らねえよ
 ……
 蕾生(らいお)が目を覚ますと、目覚ましのアラームが鳴った。

 

 不思議な夢を見たような気がするが、もう何も覚えていない。ただ、懐かしい匂いがした。何の匂いかは思い出せない。

 

 忘れてしまった夢が、心に穴を空けたようだ。言い表せない寂しさが残る。

 あー、くそ!
 蕾生(らいお)は苛立ちをかき消すように、勢いよく起き上がった。
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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