6-11 黄金色

文字数 966文字

 ライくん、なのか?
 ……
 お、黄金の鵺だと?


 そんな、そんなものは文献にも載っていなかった──そんなものがあるとは……

 ガアアッ!!
 金色の(ぬえ)詮充郎(せんじゅうろう)を見た途端に怒り猛って飛びかかり、その老体を組み敷いた。
 うわあああっ!
 お祖父様!
 お祖父様!
 星弥(せいや)はよろめく足をおして駆け寄って詮充郎(せんじゅうろう)を庇おうとその体に縋りついた。
 ライくん!もういい!──こっちへおいで?
 (はるか)がそう叫ぶと、金色の(ぬえ)はピタリと動きを止め、詮充郎(せんじゅうろう)の上からどき、ゆっくりとした足取りで(はるか)の側に座った。
 ……
 ライくん、本当にライくんなのか?
 ライ、あなた──
 皓矢(こうや)、何をしている。とても珍しい鵺が顕現したのだ、あれを何としても我々の手に!


 落ち着いている今が好機、術をかけろ!

 懲りない詮充郎(せんじゅうろう)の言葉に、(はるか)鈴心(すずね)(ぬえ)を庇うように立ちはだかる。


 しかし皓矢(こうや)は静かに首を振った。

 いいえ、お祖父様。もうやめましょう
 馬鹿を言うな!絶好の機会ではないか!
 先程までの黒い(ぬえ)ならそれもできたでしょう


 ですが、あれはダメです。勝てる気がしません

 な──んだと?
 お祖父様、少しお怪我をされています。手当を──
 黙れ!元はと言えばお前が(ぬえ)化出来なかったのが悪い!この出来損ないめが!
 ──!!
 詮充郎(せんじゅうろう)星弥(せいや)を愚弄するなら、今ここで貴方を殺します
 グルルル……
 生意気な口を聞きおって……
 詮充郎(せんじゅうろう)がわなわなと震えながらも次の言葉が出てこない隙に、皓矢(こうや)は打ち捨てられた萱獅子刀(かんじしとう)を拾って(ぬえ)に近づいた。
 何を──
 (はるか)(ぬえ)を庇おうとしたが一歩遅く、皓矢(こうや)萱獅子刀(かんじしとう)の切先を(ぬえ)の額に当て何かを述べた。
 鎮虚(しずむうつろ)温子(しをたずね)……(かえれ)
 するとその刃がまた鈍く光って、(ぬえ)の身体を黒雲が包んだ。
 てめえ!何しやがった!油断を誘ったんだな!?
 ──よく見ていなさい
 え?
 ああっ!
 黒雲が徐々に晴れていく。

 そこには人間の姿に戻った蕾生(らいお)がいた。

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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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