6-1 鵺のDNA

文字数 1,274文字

 リン、僕らに話してないことがまだあったんだね
 申し訳ありません……
 妹って、どういうことだ?
 その前に、何故、黙っていたんだ?
 ハル様には言うべきだと思っていたんですが、常に星弥(せいや)が側にいたのでお話する機会がありませんでした……
 ふうん?弁解の言葉としては弱いね
 おい、(はるか)鈴心(すずね)に怒ってる場合じゃねえだろ
 それはわかってる。けど、リン、お前はいつもそうだ


 何か大事なことを抱えて、一人で苦しんでる


 おれがそれに気づいていないとでも思った?

 ……
 いつか話してくれる、ってずっと待ってるんだよ?


 言っただろ?

 お前の分もおれが考える──おれが全部守るって

 ハル様……
 よし。じゃあ、話を聞こうか
 はい。実は日曜日に家に帰った後、星弥(せいや)と少しだけ会話したんですが──
 四日前
 すずちゃん、おかえり
 ただいま戻りました
 あの……周防(すおう)くん、まだ怒ってた?
 お怒りは少し収まっているはずです


 貴女の好きにしていいとおっしゃっていました

 え、と、(ただ)くんは?
 ライですか?


 ライは別に……怒ってないと思いますけど

 そう。でも明日もう一回謝るね
 それがいいと思います


 できれば貴女にはもう少し協力して欲しいので


 中立の立場で構いませんから

 う、ん……
 星弥(せいや)
 あ、れ?ごめんね、なんか、ふわふわする……
 微かな声でそう言った後、星弥(せいや)は突然昏倒した。
 星弥(せいや)星弥(せいや)
 突然意識を失って、今も目覚めないんです
 原因は?わかってるのか?
 すぐにお兄様を呼んで診てもらいました


 その見立てでは、キクレー因子が暴走しているようだ、と

 ──ハ?
 ?
 なんでキクレー因子が出てくるんだ?


 あれはツチノコが持ってるDNAなんだろ?

 いえ、そもそもキクレー因子は(ぬえ)が保有しているDNAです


 詮充郎(せんじゅうろう)が若い頃に銀騎(しらき)家の持つ鵺のサンプルから発見しました


 その後ツチノコもこれを持っていることが判明したんです

 嘘だろ──
 こんな重大なことを報告しなかったお叱りは後で幾らでも


 ですが、まずは話を聞いてください

 ……わかった


 で?鵺のDNAが何故彼女に?

 星弥(せいや)と私は銀騎(しらき)詮充郎(せんじゅうろう)が作った、キクレー因子を生まれながらに保有するデザインベビーです
 ──!!
 なっ──
 詮充郎(せんじゅうろう)はキクレー因子を持つ受精卵を二つ製造することに成功しました


 最初にできたのが私、次にできたのが星弥(せいや)です


 最初の受精卵にリンの魂を憑依させるのが難航したため、先に星弥(せいや)が代理母を経て産まれました。その後、二年遅れて私が誕生したんです

 それで妹って言ったのか……
 つまり、やっぱりリンは詮充郎(せんじゅうろう)に捕らえられて、挙げ句、実験台にされたってことだな?
 そう、です……
 ──
 (はるか)の瞳は憤怒に燃えていた。蕾生(らいお)はその肩を掴んで宥めるようにさするけれど、自らも怒りがふつふつと湧き上がるのがわかった。
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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