1-11 九百年
文字数 1,592文字
今からおよそ九百年前、
ある時、帝が病にかかってしまう。その原因は夜な夜な紫宸殿に現れる物の怪のせいであった。
大臣達が会議した結果、武士に警護をさせることになった。昔、鬼を退治したことのある先祖を持つ英治親が選ばれた。
弓の名手であった彼は、すぐに先祖代々に伝わる弓と矢を持って紫宸殿に参内した。
英治親は身分の低い部下の
寝所を警護していると、紫宸殿の屋根の上にかかる黒雲の中から怪しげな恐ろしい声が聞こえてくる。
英治親は弓に矢を番え、黒雲の中を狙いを定めて射った。するとその矢は黒雲を晴らす。すかさず二の矢を射る。金切声を上げて獣のようなものが屋根に当たった後地面に落ちた。
雷郷はそれに飛びかかり、持っていた短刀で喉元を刺した。リンが灯りを持って近づく。するとその異形の姿にその場にいた誰もが驚いた。
斃されたその獣は頭は猿、胴体は猪、尾は蛇、手足は虎という姿だった。
その向こうには白くて大きな、高い壁がそびえ立っていた。