6-8 黒雲

文字数 850文字

 詮充郎(せんじゅうろう)萱獅子刀(かんじしとう)幽爪珠(ゆうそうじゅ)を掲げ合わせる。するとその石が白く光り、続いて刀身が輝き始めた。

 うっ──
 星弥(せいや)!?
 あ、あ、あああああ──!
 意識もないまま、苦痛に顔を歪ませて叫ぶ星弥(せいや)を見て、鈴心(すずね)は金切り声を上げる。
 星弥(せいや)ァー!
 ふふ……いいぞ、もうすぐだ
 期待を込めて星弥(せいや)を見守る詮充郎(せんじゅうろう)の腕を、突然力強く掴む者がいた。
 どうした?ケモノの王よ
 蕾生(らいお)は詮充郎の手首を、骨が軋むほど握る。
 ふざけるな……あいつの生命(いのち)はお前のものじゃない……
 いけない、ライくん!落ち着け!
 ぐああっ!
 詮充郎(せんじゅうろう)が痛みのあまり刀を握る力を緩めると、蕾生(らいお)はそれを奪い取って力任せに床に投げ捨てた。
 なっ──
 あいつの生命(いのち)も、俺達の運命も!お前が好きにしていいものじゃない!
 ライ!!
 お前は、許さないッ!!
 もう、(はるか)の声も届いていなかった。

 蕾生(らいお)を取り巻く黒いオーラは次第に靄のようにはっきりと目に見えるようになり、雲のような形を成していく。

 ライ!よせ!
 ダメ、ライ!
 (はるか)鈴心(すずね)は同時に蕾生(らいお)の元へ走る。
 うわあっ!
 ああっ!
 だが、既に蕾生(らいお)の全身は黒雲に覆われてしまい、その黒雲に二人とも弾かれた。
 お祖父様!
 蕾生(らいお)のすぐ側にいた詮充郎(せんじゅうろう)をタックルするように皓矢(こうや)が覆い被さり、そのまま数メートル離れる。
 あ、ああ……
 これは──
 詮充郎(せんじゅうろう)は苦しげに喘ぎながらも目の前で晴れていく黒雲に歓喜の眼差しを投げた。

 皓矢(こうや)は初めて感じるソレの禍々しい気配に顔を強張らせる。

 ああ、これだ──私が待ち望んだ……遂にもう一度まみえることができる


 ケモノの王!

 頭は猿、胴体は猪、尾は蛇、手足は虎。

 そこにいる獣は紛れもなく、(ぬえ)だった。

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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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