5-7 真実

文字数 1,203文字

 記憶が残らないのは、お前が一番呪いを濃く受けているからだ


 己が(ぬえ)に変化するほどの強い呪いが!

 ──
 黙れ、詮充郎(せんじゅうろう)

 その場で先に動いたのは(はるか)だった。

 詮充郎(せんじゅうろう)に掴みかからんとする勢いで向かっていったが、その側に控えていた皓矢(こうや)が軽く手を上げて制する。

 うああっ!
 雷に打たれたように(はるか)の体は硬直した後、その手は詮充郎(せんじゅうろう)まで届かずその場で倒れる。
 (はるか)!?
 やめて、兄さん!
 すまない……だけどお祖父様に触れることは許さない
 ハル様!しっかり、息を大きく吸ってください
 だい、じょぶ、大丈夫だ、リン……
 ああ、もう。こうなっては全てが終わってしまう。──けれどまだ。

 

 (はるか)は絶望しかける自分を奮い立たせて目を開けた。

 目の前では蕾生(らいお)が焦点の定まらない瞳で立っている。

 なん、て──?
 ライ!
 は、るか……?あいつ、なんて言った?
 ライくん、大丈夫だ、気をしっかり持つんだ
 ライ、落ち着いてください、ね?
 お前達三人は何度も生まれ変わり、その度に(ぬえ)と化したお前に殺される──そういう呪いを受けたのだよ
 ──!!
 はっきりと提示された残酷過ぎる運命に、蕾生(らいお)の体は強張った。

 

 その体を守るように、(はるか)鈴心(すずね)も必死で抱きしめる。

 

 一瞬、部屋全体が静まりかえった。

 

 緊張を高めた皓矢(こうや)は右手で構えてから、低い声で言う。

 星弥(せいや)、こちらへ
 え?
 古い文献に残っているぞ。お前が(ぬえ)になる運命を知った途端に変化して、その場の人間を皆殺しにしたことがな
 ──!!
 星弥(せいや)!こっちに来なさい!
 でも……

 星弥(せいや)にはそれは現実味がないように思えた。

 

 目の前の三人はお互いを思い合って必死に抗っている。理不尽な運命を負わされても肩を寄せ合って耐えている。

 ライ……
 ライッ!
 蕾生(らいお)に呼びかける(はるか)鈴心(すずね)の姿はとても健気で、蕾生(らいお)を心から愛しているのだと思えた。

 

 そんな二人の心を、星弥(せいや)の知る蕾生(らいお)なら裏切るようなことはしない。

 星弥(せいや)!!
 焦って声を荒らげる皓矢(こうや)を無視した星弥(せいや)は、蕾生(らいお)を見つめて呟いた。
 (ただ)くんは、強いから、大丈夫……だよね?
 ──!
 糸が張り詰めたような緊張から少しの静寂の後、蕾生(らいお)の瞳に緩やかに光が戻っていく。
 は、るか。鈴心(すずね)……
 ライくん?
 ライ……?
 大丈夫、俺は、大丈夫だ。何ともない
 良かった……
 (はるか)が漏らした言葉に微笑んだ後、蕾生(らいお)は少し後ろの星弥(せいや)に目を向ける。すると星弥(せいや)はにっこり笑って頷いた。蕾生(らいお)も頷き返すが、少し照れ臭かった。
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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