1-5 所長の圧がすごい

文字数 882文字

 銀騎(しらき)皓矢(こうや)の演説の中、司会の佐藤の表情が眼鏡で隠れて見えないことに、蕾生(らいお)はなんとなく不気味さを感じていた。
 ではこのプログラムの最後に、予め録画しておいたものにはなりますが、銀騎(しらき)詮充郎(せんじゅうろう)博士よりお集まりの皆様にメッセージがございます
 再び舞台が暗くなり、スクリーンには老人の姿が映し出される。


 深い皺が刻まれた痩せ型の姿は、見ている者に畏敬の念を抱かせる。

 鋭い眼差しとともに、威圧に満ちた声でその老人は語り始めた。

 ……銀騎(しらき)詮充郎(せんじゅうろう)で御座います


 本日は当研究所にお越しいただき、厚く御礼申し上げる


 私は自らの探究心に従い、この世界の真理というものを追いかけ続けている


 一般民衆の諸君、疑問に思ったことを放棄するべきではない。何故ならそこには必ず矛盾があるからだ


 考えることを止めるな。考え続けることだけが、我々人間に与えられたただひとつの武器なのだから

 あまりに一方的な言葉に、会場中が気圧されて静まり返った。
 あ、し、失礼しました!


 祖父は研究のことしか頭にありませんで、自分の研究理念を端的に申し上げたつもりなのですが、ご覧の通りの強面なので……

 皓矢(こうや)が言いながらペコペコ頭を下げると、少し笑いが起きた。

 まばらな拍手とともに皓矢(こうや)は舞台を去った。

 ではこれからいくつかのグループにわかれて、研究所内をご案内いたします


 誘導する職員がお声がけするまでそのままお待ちください

 さっきのさ……


 銀騎(しらき)博士のこと、どう思った?

 どうって……、なんかこえーし、空気読めないジジイだなってくらいしか
 プハハッ!ジジイって……!


 めっちゃ偉い博士なのに……っ!

 でも圧が凄くて、あんまり会いたくないタイプのジジイだ
 ハハハ!そうだね、写真で見るくらいがちょうどいいよね
(ずいぶん爆笑するな……)
 できるなら、二度と会いたくなかったなあ……
 ?
 周防(すおう)様、(ただ)様、いらっしゃいますか?
 呼ばれたから行こっか
 あ、ああ……

(なんか、嫌な予感がする……)

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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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