1-8 不思議な少女
文字数 731文字
詰め寄ろうとする永 を制するように、少女はワンピースのポケットから取り出した防犯ブザーのようなものを鳴らした。
途端に温室の照明が赤く点滅し、けたたましいサイレンが鳴り響いた
鳴り続けるサイレンの音がどんどん大きくなる
出ていく直前、少女の方をもう一度振り返る。
少女の言葉に胸がひどく痛くなる。けれどサイレンの轟音に負けて、
白い道路が見えるまで、振り返らずに。
その少女の黒い瞳に浮かんでいたきらめく粒を、見なかったことにして。