7-1 未知の領域

文字数 823文字

 佐藤が去った後の室内は混乱を極めた。

 後から現れた集団は銀騎(しらき)の縁者らしかった。

 奇怪な言葉や手振りの応酬が暫くあった後、詮充郎(せんじゅうろう)は研究室から運び出されていく。


 皓矢(こうや)がその先頭を行き、集団の後を星弥(せいや)もついていった。(はるか)達三人はさらにその後を走り、どさくさに紛れるような形で外へ出る。

 皓矢(こうや)星弥(せいや)も含めた集団は脇目も振らず研究所の建物へと向かっていった。


  

 ぽつんと残された三人は、鈴心(すずね)の提案で銀騎(しらき)の自宅へと戻り応接室で待機することにした。

 なんか、疲れたな
 うん、それに消化不良だよ
 そうだな。まだ話の途中だったのに


 爺さん、死なないといいな

 死ぬもんか、あのしぶといジジイが!


 死んだら、もう絶対許さないんだ!

 鈴心?どうした、気分でも悪いのか?
 ──あ、いえ、別に


 ライこそ大丈夫ですか?

 (ぬえ)化してまた戻るなんて、体にどれだけの負担がかかったか

 ん?俺は何ともない


 ちょっと疲れてるけど、一晩寝たら治るだろ

 そうですか、それは良かったです
 あの女──
 うん?
 あの佐藤って女、何者なんだろう


 皓矢(こうや)の口ぶりじゃ、銀騎(しらき)の一族って訳でもなさそうだ。

 なのに不思議な術を使う……

 (はるか)にも心当たりないのか?


 いつかの転生で会ってたりとか

 いや──さっぱり検討もつかない。リンもそうだろ?
 そうですね……佐藤さんのような人は今回初めて会いました


 以前から近寄りがたい人だったんですが、あんな本性があったなんて

 すごい豹変ぶりだったもんね


 呪いを解くどころか、新しい謎ばっかり増えるなあ……

 ですが、確実に私達が経験したことのない事ばかり起きています。前向きに考えれば──
 そうだねえ、未知の領域に来たことが吉兆だと捉えていいものか……


 ていうか、未知過ぎてこれからどうすればいいのか全然わかんないんだけど!?

 確かに……
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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