6-14 前回

文字数 797文字

 穏やかな様子も束の間で、また思い出したように詮充郎(せんじゅうろう)は憎しみを吐露する。
 だが、その矢先に分家の分際で御堂(みどう)が裏切った。その裏にはお前達がいたな
 前回の転生のことだな
 私達親子は(ぬえ)に肉薄しながらも勝てなかった。紘太郎(ひろたろう)は重傷を負った


 (ぬえ)と相打ちになったお前たちの亡骸を見て思ったよ。せめてこいつらの遺体は絶対に保存して隈なく研究し尽くしてやると!


 だが、それも半分は叶わなかった。死んだと思っていたリンが息を吹き返したことでな

 ──!
 あの娘は私に取引きを持ちかけた


 ハルとライはこのまま転生させろ、その代わり自分の身体を差し出すと

 な──
 私としてはとても美味しい話だったよ。生きた因子持ちのサンプルが手に入るのだから


 だが、よく見ればリンも一時的に生き返っただけで、瀕死の状態だった

 ──……
 心配するな、私は約束は守る
 え?
 そこで構想中だった試験管ベビーの研究を思い出した


 死にゆくリンの魂を保存しておいて、実験用の卵子に憑依させリンの生まれ変わりを我が手中に収めることにした

 そんなことが本当に可能だったのか?
 我が息子、紘太郎(ひろたろう)にかかれば可能なのだよ!


 紘太郎(ひろたろう)はすぐにリンの魂を抜き、一先ず家宝の幽爪珠(ゆうそうじゅ)に格納した


 それから幽爪珠(ゆうそうじゅ)から魂を卵子に移す術式を私に託して、力尽きて死んだ

 お父様は、その時に亡くなっていた──

 銀騎(しらき)紘太郎(ひろたろう)の死の真実を知り、星弥(せいや)は絶句する。


 詮充郎(せんじゅうろう)は明確な年代を言わないが、少なくとも十六年以上は前だろう。ならば自分はどうやって生まれたのかを考えた。


 皓矢(こうや)にその答えを求めたが、兄は何も言わずに星弥(せいや)の手を優しく握る。詮充郎(せんじゅうろう)の嘆きの言葉はその間も続いていた。

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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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