2-9 オコサマ

文字数 1,053文字

 なんだかんだと話していると前回来た研究所の物々しい鉄の通用門が見えてきた。


 少し横にそれてみると鬱蒼と繁った藪の中にレンガ敷きの細い通路があった。


 少し歩いた先に西洋風の大きな門構えが現れる。その中にはこじんまりとした石造りの洋館が建っていた。

 いらっしゃい、(ただ)くん、周防(すおう)くん
 こんにちはー
 ……ウス
 いやあ、ほんとに研究所の敷地内にお屋敷があるんだね!


 この前来た時は全然わからなかったよ

 うん、プライベートな場所は施設内の地図に載せてないから
 へえ、なるほど……
 お祖父様は全然こっちには帰って来ないの


 兄さんも夜遅くに寝に帰ってくるだけで


 母とわたしとすずちゃんだけだと外に住むよりこっちの方が安全だろうって

 すずちゃん?
 うん、うちで預かってる子


 今連れてくるから、座って待ってて

 女の子なんだ?
 うん

 短く返事をした後、星弥(せいや)は奥の部屋に消えていった。


 入れ替わりに黒いワンピースにエプロンをつけた中年の女性が二人を応接室に案内してくれた。

(うそ、これってメイドさん?)
(だろうな)
(生メイド、初めて見た……)
 小声であっても聞こえていないはずはないが、家政婦風の女性は何も言わずに二人を案内した後、お茶のポットやお菓子が乗せられたカートをその場に置くと、一礼して部屋から出ていった。
 ねえ、ライくん

 気づいた?


 門に付いてるのチャイムだけで、外からの訪問者が名乗ることができなかった

 うん?
 きっとわからない所に監視カメラがついてて、家人が知ってる人しか入れないんだろうね
 ああ……?
 なんか、隠れて住んでるみたい
 その言葉にはたっぷりの侮蔑がこめられていた。

 その様子を見て、蕾生も気を引き締めた。

 なあ、永、ここんちの親父さんって──
 だいぶ前に亡くなってる
 そっか……
 ふと戸棚の中に小さな写真立てがあるのが見える。

 銀騎(しらき)皓矢(こうや)に似た男性が少し儚げに微笑んでいた。

 コンコンと応接室の扉を叩く音がして、星弥(せいや)が遠慮がちに扉を開けて部屋に入ってきた。
 お待たせ
 そしてその後ろにもう一人分の人影が続く。小柄な少女だった。長い黒髪を左右にレースのリボンで結い、控えめにレースがあしらわれた白いブラウスにピンク色のフレアースカートを纏っている。


 俯きながら星弥(せいや)に続いて部屋に入ってきた。

 さ、鈴心(すずね)ちゃん、ご挨拶して?
 み、御堂(みどう)鈴心(すずね)です


 きょ、今日はようこそお越しくださいまし──

 ──!
 ──リン!?
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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